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2020年9月 7日 (月)

『建築と時間と妹島和世』を楽しむ

10月3日公開のドキュメンタリー『建築と時間と妹島和世』を試写で見た。監督は個性的な写真で知られるホンマタカシだったが、この異色の組み合わせがうまく行った感じ。

もともと建築は動かない。写真も動かない。では写真家が建築家を映画に撮るとどうなるか。ホンマタカシは普通の映画のようにカメラを動かさない。固定ショットで、動き回る妹島和世や建築現場に動くクレーンやトラックの動きを見せる。

何といっても、妹島和世がかわいらしい。日本の建築家は磯崎新も安藤忠雄も槇文彦も隈研吾もみんな哲学者のようで重々しい印象があるが、彼女は「気さくなおばさん」という感じで天真爛漫にどんどん喋る。主に黒い服で現れて、その時に思ったことを素直に話す。「予算がオーバーになって、屋根を3枚に分けたのよ」

静止した画面は、彼女だけを強調する時は真四角になったり、縦長になったり。彼女はヘルメットを被って、自分より背の高い10人近い男性たちを従えて現場を歩き、現場を俯瞰する場所で出来具合について心配し、都内の事務所で模型を前に語る。「現場じゃなくここに戻って考え直すと落ち着いた判断ができるのよ」

映画は、大阪芸術大学の新しくできるアートサイエンス学科の校舎建設の過程を、2015年12月の模型の時点から2018年11月の竣工まで追う。一番おもしろいのは、カメラを現場を俯瞰する位置に固定させて、定点観測のように見せる映像。朝5時くらいの日の出から夕方6時くらいの日没までを早回しで見せる。

一日を数秒で見せることもあるが、まるでアリの集団の仕事のように、少しずつ建物が仕上がってゆく様子がわかる。妹島自身もパソコンでその早回し映像を見ながら感心している。ホンマタカシの質問の声は省いて、文字だけで見せる。たえずピアノとドラムの音楽が続く。シンプルな構造の映像の連続がホンマタカシらしい。

ヴィム・ヴェンダースが、妹島がSANAAとして参加したローザンヌ工科大学を撮った映像を見たことがあるが、今回の映像の方がずっとおもしろい。妹島の作品は、SANAAとしては金沢市21世紀美術館やニューヨークのニューミュージアムを見たが、今回の大阪芸大は個人の仕事。これも見てみたいし、1年半前から走っている彼女がデザインした西武池袋線の特急も乗ってみたい。

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