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2020年9月 8日 (火)

『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー』を読んで

ヒロ・マスダ著の新書『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー』を読んだ。厳密に言うと、「読んだ」というより「流し読み」した。本来ならば私に関心があるテーマだが、とにかく話が細かすぎて読みづらい。そのうえ新書なのに400ページを超す(同じ頃に出た私の『美術展の不都合な真実』のほぼ2倍!)。

副題は「経産官僚の暴走と歪められる公文書管理」。2010年代に経済産業省から出た「クールジャパンマネー」は、経産省が民間と作った投資ファンドを通じて総額1000億円以上が無駄になっているという内容で、この本では特にANEWという団体とJ-LOPやJ-LODという補助金の闇に迫っている。

ANEWとはAll Nippon Entertainment Worksで、官製ファンドの産業革新機構が60億円の出資をして2011年にできた。「日本の物語のハリウッド映画化を促進することを通じて、日本の映画、放送コンテンツなどIP(知的財産))の海外展開の成功事例を加速させる」ためというから、既に怪しさが漂う。

実際、ANEWは設立から5年間売り上げはゼロで、毎年2億円から5億円の赤字を出し続け、2017年にタダ同然で京都の投資会社に売られたという。トップはハリウッドのサンフォード・クライマンで、年間数千万円の報酬を払っていた。さすがに国会でも話題になってANEWが企画開発をしたという案件7本が開示された。

そのうち、聞いたことのある映画は『藁の楯』だけで、資料にはフランスやアメリカの出資が書かれているが、実際はワーナー・ジャパンと日本テレビが中心になった普通の日本映画だったはず。話題になったのは日本の新幹線のシーンを台北で撮影したことで、これはむしろANEWの趣旨とは逆かもしれない。

もう1つのJ-LOPは「ジャパン・コンテンツ・ローカライズ&プロモーション」の略で、これは映像産業振興機構(VIPO)に補助金をつけている。2015年カンヌで「くまモン」を使った盛大なキャンペーンが話題になったが、そのお金はここから出ている。毎年、60億円程度がJ-LOP、J-LOP+、J-LODなどと名前を変えて流れているようだ。

そのお金を運用するVIPO自体は、2004年にできており、理事には大手映画会社やテレビ局などのトップが並ぶ。経産省のみならず、文化庁や東京都の委託事業も受けている。東映に勤める知り合いも数年出向していた。

この本には書いていないが、興味深いのはVIPOは松竹本社のある東劇ビルにあることで、東京国際映画祭事務局もある。VIPOに入るJ-LODの60億円があったら、せめて20億円を東京国際映画祭に使ったらいいのにと素直に思った。

この本には日本を舞台にしたのに日本でロケされなかった映画として、『沈黙ーサイレンス』:台湾、『The Forest樹海』:セルビア、『パシフィック・リム』:カナダ、『GODZILLA:ゴジラ』:ハワイ、『007:スペクター』:ロンドン、『47RONIN』:ハンガリー、『終戦のエンペラー』:ニュージーランドなどが挙がっている。

確かに日本でロケをしたら何億円も落ちただろう。どうすればいいかこの本にも書かれているが、私にはわかりにくい。そんなに難しいことではないように思うのだが。それにしてもこの込み入った本についてここで書くのは骨が折れた。

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