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2020年9月24日 (木)

多和田葉子にまた痺れる:『地球に散りばめられて』

多和田葉子の小説は去年読んだ『献灯使』(2014年)が痺れるほどすばらしかったので、次に何を読もうかと考えていた。どこかで彼女自身が2018年の『地球に散りばめられて』のことをエッセーに書いていて、おもしろそうだったので買った。

『献灯使』は日本が滅亡しつつある近未来を描いたものだが、『地球に散りばめられて』は日本がなくなった後に海外で生き残った女性Hirukoが主人公。デンマークのコペンハーゲンでテレビを見ていた言語学科の大学院生クヌートは、彼女を初めてテレビで見て興味を持つ。

「彼女が生まれ育ったのは、中国大陸とポリネシアの間に浮かぶ列島らしい。一年の予定でヨーロッパに留学し、あと二ヵ月で帰国という時に、自分の国が消えてしまって、家に帰ることができなくなったそうだ。それ以来、家族にも友人にも会っていない」

その国が「日本」という名前だということも、なぜその国が消えてしまったかも、小説の最後まで出てこない。しかしHirukoの話す「うまみ」「だし」「コスプレ」「しにせ」「てんぞ」といった言葉からその国は明らかに日本だとわかる。

Hirukoはノルウェーに留学していたが、大学には残れず「帰ろうと思っていた国が消えてしまって、これからどこで暮らしていいか途方に暮れてた。メルヘン・センターの求人広告を読みながら、ふと、わたしのつくった言語を移民たちに教えてみたいと思いついた。この言語はスカンジナビアのどこの国に行っても通じる人工語で、自分では密かに「パンスカ」と呼んでいる。「汎」という意味の「パン」に「スカンジナビア」の「スカ」を付けた」

「パンスカ」とはまるで「パンスケ」みたいだが、彼女はその言葉を紙芝居を使ってデンマークのメルヘン・センターで移民に教え始める。クヌートはテレビ局に電話をかけてHirukoに会い、彼女が翌日にドイツのトリアーに行くことを知る。「明日トリアーで行われるウマミ・フェスティバル。旨味は、本来的には、わたしの母語にあった単語。実演会場に行けば、母語をシェアする可能性」

Hirukoのパンスカ語はこんな感じで、体言止めが連なってゆく。クヌートはHirukoについてトリアーに行くことにした。ここまでが第二章で、実は第一章はクヌートの語り、第二章はHirukoの語り。その後インド人でトリアーに住み、男性に生まれたが女装をするアカッシュ、ドイツ人女性で寿司職人のテンゾを日本人と思って愛したノラ、テンゾと名乗っていたイヌイットのナヌークなどが続々と出てきて、語りを始める。

彼らはテンゾがノルウェーのオスロから帰って来れないので、トリヤーからオスロに行く。そこで南仏のアルルにHarukoの同国人Susanooがいると聞いて向かう。自分であらすじを書いていて、めまいがしてきた。主語も述語もないパンスカ語の妙な調子が頭に焼き付いて離れない。

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