中国人留学生が増えた
私の大学では5、6年前から中国人留学生が増えた。学部は倍率がある程度高いので、中国人は留学生枠しか狙わないが、大学院となると倍率も高くないので普通にどんどん受けてくる。
私の勤める芸術系の学部はもともと実作志向が強く、卒業後は大学で学んだ技術やセンスを企業で試すか、しばらくフリーでバイトをしながら創作を続ける者が多い。大学院でも創作はできるが、学費も高いのでなかなか行かない。
そんなわけで大学院が定員に達しないことが多かった。そこを狙ったわけではないだろうが、大勢の中国人留学生が受けに来るようになった。彼らは中国各地の大学を7月に卒業し、9月に日本に来る。そして1年間日本語学校に通い、10月頃に日本の大学院を受験する。
大学としては経営もあるので、大学院が定員に達しないのはまずい。何年も定員割れだと文科省の「指導」もあるだろう。そういうわけで多少日本語が怪しくても、やる気のある中国人留学生は修士課程に合格する。
面接でも小論文でも同じパターンの答えがあるので、たぶん日本語学校で教えているのだろう。例えば「修士課程を終えたら、どうしますか?」と聞くと、必ず「まずは日本の企業に就職したいです」という答えが多い。「将来は?」と聞くと、「日中の映画の架け橋になりたい」「日本で学んだことを中国で生かしたい」
映画を大学院で学ぼうという彼らだが、中国の大学で映画史をきちんと学んだ者は少ない。ほぼみんな日本のアニメが好きで、是枝裕和を尊敬している。そのほかの日本映画は、黒澤明に小津安二郎くらい。入学時に溝口健二を見ていたらかなり珍しい。
しかしながら、ほぼすべての学生は真面目に勉強する。まず、たった1年半でよくこれだけ日本語ができるものだと感心する。今年はかわいそうにオンライン授業だが、みんなよく授業を聞く。この映画を見ておいてくださいと言うと全員が見てくるし、発表してくださいと言うとかなり調べてくる。
だから彼らとの会話は楽しい。みんな清水宏監督の映画の自由さに驚き、島津保次郎監督や吉村公三郎監督のメロドラマのうまさに感心する。中国と戦争をしていた1939年に吉村の『暖流』のようなモダンな恋愛映画が撮られていたなんて、と。
慣れてくると、授業の初めや終わりに雑談もする。彼らはビー・ガンやワン・ビンやディアオ・イーナンなどもよく見ているし、『フェアウェル』のことは「あってもなくてもいい映画という感じ」と言い、ディズニーの『ムーラン』に至っては「中国で評価している人はいない」。いやあ、楽しい。
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