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2020年10月29日 (木)

「ピクチャレスク・ジャパン」に考える

国立映画アーカイブで「ピクチャレスク・ジャパン―世界が見た明治の日本」という上映に行った。いつ頃からか毎年この時期になると同アーカイブでは、「ユネスコ『世界視聴覚遺産の日』特別イベント」としてかなりレアな作品が上映される。

最近は事前に予約ができるので並ばなくていい。今年は英国映画協会(BFI)所蔵のコレクションから、明治期に外国人が日本を撮影した映画をデジタル復元版で上映した。実はピアノ付きだと知らなかったが、伴奏の柳下美恵さんが出てきたのでびっくりした。

1904年から11年までの10分以内のドキュメンタリーが13本。1時間と少しで、その後に講演(前の回の録画)が3つあった。時代からするとリュミエール兄弟やエジソンが日本を含む世界各国にカメラマンを送った後の映画で、ヘップワ―ス、ウォーリック、アーバン、パテ、シーリグの各社によるもの。

ヘップワースと言えば英国のブライトン派。『ローヴァ―に救われて』のような画期的な劇映画を思い出すが、日本にカメラマンを送っていたとは。ほかにもアーバンなど映画誕生期、初期の有名人ばかり。

基本的にはリュミエール兄弟が日本に送ったコンスタン・ジレルとガブリエル・ヴェールが撮った映像の路線だが、稲刈りにしてもアイヌにしてもより日常の細部を捉えている。学校の生徒、葬式、保津川下り、鵜飼など日本にかなり入り込まないと撮れないような映像も多い。

一番驚いたのは『保津川の急流下り』(1907年、パテ・フレール)。パテはフランスの会社だが、当時世界最大の映画会社の一つなので、ロンドンに支社があったのだろう。映画によっては字幕が英語でも仏語でもなくドイツ語。カメラは舟の一つに置かれ、ほかの舟が急流を下るさまや、周りの山の木々を鮮烈に写す。時代的にカラーフィルムではなく着色や染色のはずだが、木々の緑が本当に美しい。

舟から落ちそうになるほどの急流から最後の流れの緩やかな渡月橋まで、7分間で川下りの全貌を見せる。激しい水の流れも鮮明で、本当にカラーのようだ。同じ川を撮った映像では、『鵜飼』(1911年、チャールズ・アーバン・トレーディング社)が出色の出来。長良川で5曹の舟が篝火を焚いて1人で10羽ほどの鵜を使って鮎を取る。庭で鵜に鮎を取らせる実演もある。

そのほか、日本の葬式やお祭りの行列がやたらに豪華だったのにも驚いた。シルクハットやカンカン帽など男性はやたらに帽子を被っている。和服が多いが、葬式ではフロックコートもあるし、警官はもちろん詰襟の洋装。4人の15分ずつの講演もおもしろかったので、もう一度書きたい。

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