« ユーチューブで見る『兄とその妹』 | トップページ | 『河内山宗俊』の4K復元版に震える »

2020年10月 8日 (木)

『国家の怠慢』を読む

高橋洋一氏と原英史氏の対談を新書にした『国家の怠慢』を読んだ。私の『美術展の不都合な真実』と同じ新潮新書で3カ月後に出たが、これはすぐに3刷となった。どんな本かとアマゾンで高橋氏の序文を読んだら抜群におもしろかった。

1955年生まれの高橋氏は旧大蔵省、1966年生まれの原氏は旧通産省のキャリア官僚で、今は大学で教えたり本を書いたり、シンクタンクを運営している。そんな彼らが今の政治や官僚のどこがよくてどこがダメかを自由に論じるというもの。

もちろん辞めたから言えることばかりで、その意味では私の『美術展』に近い一種の暴露本。しかし話が政治だから次元が違う。コロナ禍の景気対策で、「一番簡単なのは消費税減税なんですけど、これは絶対に財務省がダメだって言い出すからやらない」と高橋氏。

そして「それができない理由は、政治ですよ。要するにもう政界の雰囲気はポスト安部になっていて、岸田さんが圧倒的に有利なんですよね。岸田さんは宏池会だし、もともと財務省の意向で動く人」

またオンライン教育が遅れたことに関して高橋氏は小中学生約1千万人にパソコンを配ればよかったと言う。「一度に予算化してもせいぜい5000億円。教育というのは投資に一番向いている案件だから、将来投資として国債を出してやっちゃえばいい」

2人ともマイナンバーに銀行口座を結び付けておけば給費金の支給は簡単だったと言う。「今回でもマイナンバーを作ったら銀行口座にお金を振り込んであげるといったらみんな作るんじゃないですかね」

高橋氏はかつて金融機関の大蔵官僚への接待がすごかった話や「「政府出資や補助金のところすべてに絡んでいるから天下り先がハンパじゃないですよ、ほかの省庁に比べて。だって全部の省庁の特殊法人とか天下り機関に行けるから、猛烈にすごいわけです」と官庁の天下り天国を話す。

原氏は規制緩和に強く、「一部の既得権と国全体の利益が乖離したときにどっちを優先するかというと、役所はたいてい既得権の側につきます」。それを破るにはトップダウンしかない。「最近は、官僚の忖度をもたらした元凶などと批判されがちな内閣人事局もその一環」で、つまりは安倍政権の考えに近い。

それが後半の新聞、テレビの徹底批判や元文科事務次官の前川氏批判になる。「レベル低いですね。本当にね。文科省らしいですよ」。元エリート官僚たちの言いたい放題は、かなりおもしろい部分もあるが、私にはあまり後味のいいものではなかった。

これはオンラインの対談を本にしたという。ずいぶん簡単な本作りもあるものだ。

 

|

« ユーチューブで見る『兄とその妹』 | トップページ | 『河内山宗俊』の4K復元版に震える »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ユーチューブで見る『兄とその妹』 | トップページ | 『河内山宗俊』の4K復元版に震える »