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2020年10月23日 (金)

『林彪事件と習近平』を読む

12月に開催する学生企画の映画祭「中国を知る」のために、古谷浩一著『林彪事件と習近平』を読んだ。まずは自分が勉強して学生に促すやり方というよりは、私の場合は大学に移ってからはいつも「学びながら教える」自転車操業だ。

筆者の古谷浩一氏は「朝日」の論説委員で、この本は5、6年前に朝日新聞に連載された「林彪事件をたどって」をもとにして書かれたもの。連載の時に「ずいぶん古い話を追いかけるものだな」と不思議に思った記憶があった。

私はその連載を読むまで林彪事件を知らなかった。「りんぴょう」と読むことさえも。これは1971年9月13日、当時毛沢東に次ぐナンバー2だった林彪・中国共産党副主席が毛沢東暗殺を企てて失敗し、ソ連に飛行機で逃亡しようとしてモンゴルに墜落死した事件である。

「事件から約9か月たってから、中国当局はようやく事実関係を認め、その後、公式見解が発表されたのだが、それでも未解決のナゾは今なお残っている」。確かに日本で大きく報道された記憶はない。私は小学5、6年生の頃から新聞が大好きだったので、同じ頃のあさま山荘事件や金大中事件は克明に覚えているが、この事件の扱いは小さかったのではないか。

著者は50年近くたってこの事件の謎を追う。「林彪ほどの高官が、なぜ毛沢東を暗殺しようとしたのか。本当に亡命しようとしていたのか。なぜ飛行機は墜落したのか。機内ではいったい何が起きていたのか」

私はこの本を読み始めて、すぐに吉田喜重監督が書いた小説『贖罪』のルドルフ・ヘスを思い出した。この本についてはここでも書いたが、ナチスの副総統・ヘスが勝手に英国との講和を考えて飛行機で行ってしまった事件をもとにしている。林彪は9人で飛行機に乗って墜落したが、ヘスの場合は無事着陸して逮捕され、監禁されて戦後も生きる。

林彪に戻ると、おもしろいのは50年たっても当時を知っている人が何人も出てくることだ。モンゴルの当時の外務次官や中国の在モンゴル大使館に勤めていた元外交官や墜落そのものを見た現地の人まで。

正確なことは結局何もわからないが、この調査でわかってくるのは、毛沢東は林彪が国家主席の座を狙っていることを知って怪しみ、江青ら「四人組」は林彪を追い出そうするような凄まじい権力闘争の跡である。もちろん、その奥には1966年から毛沢東が亡くなる76年まで続いた文化大革命がある。

さて、ではなぜ林彪事件が本の題名に出ている習近平と結びつくかについては後日書く。

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