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2020年10月14日 (水)

初秋の快感

先日、クリーニング屋さんに行って半袖シャツを出した時に、思わず「今が一番いい季節ですかねえ」と口走った。この時期にそんなことを考えたことはこれまでないが、自然とこの言葉がポロリと出た。われながらお年寄りのようだと思った。

たぶん今年は、3月頃からのコロナ禍の蟄居があり、7月の雨があり、8月の猛暑が9月末まで続いたからだろう。最近は映画館も美術館も普通に空いているし、大学も一部は対面授業になった。学生の顔を見ながら話すのが、こんなに気持ちのいいことだとは考えもしなかった。

晴れた日にはこの半年の憂鬱がどこかに消えてゆく感じがする。長袖を着ても汗が出ないのが気持ちがいい。服を着ることがこんなに気持ちいいとは。5月頃からいつもTシャツ、半ズボン、サンダルばかりだった。大学の授業はオンラインで顔しか見えないので、お洒落をしてもしかたがなかったし。

この快感には記憶があった。4年前のパリで、5月半ばから9月半ばまでの期間。カンヌ国際映画祭から帰ってきたら、まるで南仏の初夏を持ってきたように、パリでも夏が始まった。朝は10度から15度、昼は20度から25度くらい。ちょうど今の東京と同じ温度が何カ月も続く。

もちろん7月や8月には30度を超すこともあるが、普通だと最高で25度くらい。これだとTシャツや半袖では朝は寒いので、長袖を着る。あるいは薄い麻や綿のジャケットを羽織る。大通りの並木が目に快く、いつまでも歩いていたい気持ちになる。

パリでは週に2度はアラゴー大通りからゴブラン大通りを15分ほど歩いて、アールデコ建築の市営プールに通った。今ではパリも魚屋さんが少なくなったが、プールの近くには安くて親切な魚屋さんがあって、プールの後にそこでよくマグロやサーモンやホタテを買って帰った。

6月にイタリアのボローニャの復元映画祭へ、7月に調査のためにローマに行ったが、日本のように暑かった。Tシャツ、半ズボン以外では野外で歩くのは不可能だった。ボローニャにはフランスの映画評論家のジャン・ドゥーシェさんも来ていたし、ローマでは昔の職場の高須さんにもあったが、2人とも亡くなってしまった。

初秋の朝の気持ちのよさに、また「ノスタルジア」を始めてしまった。冬の前のこの気候が一日でも長く続きますように。

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