PFFの受賞作に驚く
いやあ、驚いた。今回、ぴあフィルムフェスティバル=PFFの受賞作をいくつかオンラインで見て、その尋常ではないおもしろさに唸ってしまった。PFFの映画祭では有名監督の特集などを見に行ったことはあるが、コンペを見るのは初めてかもしれない。
見たのは審査員特別賞の『MOTHERS』(63分)、観客賞の『アスタースクールデイズ』(38分)、エンタテインメント賞の『こちら放送室よりトム少佐へ』(10分)で、短めの作品を選んだ。
22歳の関麻衣子監督の『MOTHERS』は自分の父親を撮ったドキュメンタリーだが、いきなり茶髪のヤバイおじさんが出てきて「私の父の関卓司です」。53歳の父親は背中に入れ墨をしており、大量の薬を毎日飲む。時々何を言っているかわからなかったり、発作のように怒鳴ったり。
なぜ題名が『MOTHERS』なのかと言えば、麻衣子と2歳上の桃子の姉妹は父が2度離婚して3人の母がいるから。現在の母は32歳のフィリピン人のアイリーン。育ててくれた2番目の母に手紙を出すが返事がなく、姉妹は実家に出かけるが玄関のブザーを押しても誰も出てこない。
ここまででも十分におもしろかったが、ある時フェイスブック経由で従兄と名乗る男から連絡があった。姉妹を生んだ母アナリンの姉の息子でかなたと言う。従兄は姉妹に会い、後日父にも会って盛り上がる。かなたはアメリカに住むアナリンにラインを送ると、「日本に会いに来る」
とうとう生みの母、アナリンがやってきて姉妹は品川駅のレストランでかなたや叔母と共に会う。48歳のアナリンは姉妹が小さかった時のたくさんの写真を取り出す。みんな涙、涙で私も涙。アナリンは娘たちにいつでもノスカロライナ州の家においでと誘う。それでも姉の桃子にはこだわりがあった。数日後、アナリンは父と会う。また涙。
これで終わりかと思ったらまだあって、姉妹はアナリンの最初の子供で姉妹の兄にあたる男や祖母とスマホで会話をする。さらに数か月後には麻衣子はフィリピンに住む彼らに会いに行く。祖母は麻衣子たちが遊んだおもちゃを持っていて見せる。また涙。
ある日かなたから連絡があって、父は彼に金を寄こせと言っているらしい。また新たな展開かというところで映画は終わる。もっと見たい。日本映画大学のロゴが最初に出てくるから卒制だろか。すごい。撮り足して80分くらいになれば、ポレポレ東中野でロングランだろう。
18歳の稲田百音監督の『アスタースクールデイズ』は花を配る不思議な転校生が巻き起こす高校生の話でなぜか視線やしぐさが繊細な映画に仕上がっているし、千坂卓也監督の『こちら放送局よりトム少佐へ』は1989年を舞台にした16㎜作品で、ノスタルジックで完成度が高い。
偶然に選んだ短めの3本を見ただけだが、とにかく発想が図抜けている。今月末までは無料登録で見られるので、時間がある方は騙されたと思ってぜひ。映画を学ぶ学生は必見。https://pff.jp/42nd/news/2020/10/award-online.html
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