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2020年10月16日 (金)

驚異の式場隆三郎展

練馬区立美術館で12月16日まで開催の「式場隆三郎 [腦室反射鏡]」展を見た。実は式場隆三郎の名前は聞いたことがなかった。まるで横尾忠則が作った状況劇場のポスターのようにおどろおどろしいチラシを見て、知られざるシュルレアリスム画家かと思ったくらい。

ところがそのチラシの裏面をよく読むと精神科医で、「医業のかたわら、民藝運動、ゴッホ論、精神病理学入門、性教育書に至る驚きべき健筆をふるい、生涯の著書は約200冊に及ぶ。ゴッホ複製画展や山下清展などの事業も手掛け、広範囲な大衆の関心と趣味を先導した」

そのうえ「山下清のプロモーターを務め、初期の草間彌生を支援し、北条民雄・永井隆・三島由紀夫とも交流する」「民藝運動に初期から参画、芦沢銈介、バーナード・リーチ、宮本憲吉らとも親交を結んだ」「『人妻の教養』『結婚の饗宴』『独身者の性生活』といった著作でジャーナリズムの寵児となり、出版社やホテルの経営にも関わっている」

展覧会には、その彼の活動を網羅すべく、彼が所蔵していた山下清などの美術品、海外のゴッホ論などの本、自分が書いた本、高村光太郎や三島由紀夫や小林秀雄などからの手紙などがところ狭しと並んでいる。A3の作品リストが裏表で2枚あり、たぶん展示作品300点は越している。彼が伊豆に作ったホテルの写真まである。

いわゆる美術品は全体の1割くらいではないだろうか。後はひたすら「資料」が並ぶ。それを細かに見ていたら時間がいくらあっても足りない。圧巻なのは1954年の「ゴッホ複製画展」で並んだ30余点の写真複製画をずらりと展示していることだろうか。それらはアメリカやオランダなどで19世紀末に作られており、式場は海外出張の際に買ったり、海外に発注している。

もちろん今のデジタル複製画に比べたらできは悪いし、色が褪せたものもある。しかしそれらの複製が額に入って、堂々と美術館の一室を占めている様子は圧巻だった。とにかく世界中のゴッホの有名作品がすべてそこに並んでいる。各地の開催ポスターやチケットもあった。そこには戦後の文化復興の熱気が感じられた。

小林秀雄が有名な『ゴッホの手紙』を書いたのはこの展覧会を見たからというし、1958年に日本で初めてのゴッホ展が東京国立博物館で開かれたのは、オランダの国立美術館が複製画展の成功を聞いたからだという。式場はゴッホの絵をモチーフにした浴衣や法被やワンピースまでデザインしてオランダに送っている。

見ていて頭がくらくらした。美術展カタログは置く場所がないので買わないことに決めているが、久しぶりに欲しいと思った。ところがまだできていないので新潟市美術館に連絡してくれという。残念。今年一番驚いた展覧会だった。

 

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