東京国際とフィルメックスの間を彷徨う:その(7)まとめ
さて、東京国際映画祭と東京フィルメックスは終わって1週間がたった。全部で20本ほど見た感想は書いたが、「まとめ」を書いていなかった。全体として見たら、「改革」の兆しが見えてきたのではないか、というのが、私の印象だ。
最初は、一緒にやったら見たいものが見られなくなる、と焦った。けれど考えてみたらカンヌもベネチアもそんなものだ。公式上映だけで40本くらいあるし、そのほかのセクションを入れたらいつも大混乱だ。
むしろ両方を合わせてみたら、全体としてずいぶんリッチな映画祭に見えてきたから不思議なものだ。何となくこのままいけば釜山を脅かすのではないかと言う気さえしてくる。
その象徴が「アジア交流ラウンジ」でフィルメックス常連で今回も出品しているリティ・パン監督が日本の吉田喜重監督と対談したりしていると、何となくオール・ジャパンの感じもしていい。是枝裕和監督の提案というが、韓国のキム・ボラ監督と橋本愛が対談をして是枝監督が司会をするなど、東京国際映画祭じゃないみたい。
今回はオンライン開催だったが、これが一般の観客を交えた形だと盛り上がるだろう。国際映画祭の本来の目的である映画人同士、映画人と観客の交流ができそうな予感がした。
コンペとアジア部門と日本映画新人部門をなくして、「Tokyoプレミア2020」とフラットに32本並べたのもよかったのではないか。従来のコンペはワールドプレミアでもないのに、なぜかフランスやイタリアやドイツの凡庸な作品があったが、それらが一掃されて2/3がアジア映画になった。来年はすべて「ワールドプレミア」のみにしたらなおいい。
さてコンペなしで観客賞のみがいいのかわからない。今年の観客賞の『私をくいとめて』は林遺都のファンの組織票とも言われたが、毎年観客賞はほとんど日本映画で、それもアイドルの出るものが多い。国際映画祭の賞としてはどうだろうか。やはり東京の場合、賞はあった方がいいかもしれない。
そんなこんなを1週間前に「朝日新聞デジタル論座」に書いたが、今朝アップされた。2日間は無料らしいので、ご一読を。さて東京国際映画祭は来年さらにいい方向に向かうのか。「抵抗勢力」もあるらしいので、まだまだわからない。
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