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2020年11月 4日 (水)

フランス人はわからない:その(1)

フランスには間違いなく30回以上行っているし、1年、半年、3カ月と滞在したこともある。それでも、フランス人はわからないと思うことが多い。最近のフランスでの大きなニュースは、新型コロナの感染者急増によるロックダウンとイスラム教をからかう風刺画をめぐるテロ事件である。

フランスのコロナ禍は日本でもよく伝わっているが、イスラム過激派によるテロのニュースはあっても詳しくない。10月16日にパリ近郊のイヴリーヌ県で中学教師のサム・パティが、ムハンマドの風刺画を授業で見せたことに対して、過激派の男が中学校に押し入り、首を切って殺害した。

問題はこの後で、マクロン大統領は「フランスはテロに屈しない」「私たちはカリカチュアを描くことをあきらめない」「私たちには冒涜の権利がある」などと発言した。案の定、南仏ニースの教会でキリスト教徒3人が入国したばかりのチュニジア人に殺された。フランスではないが、一昨日ウィーンで4人が殺害された事件もイスラム過激派によるものだ。

「ルモンド」紙などを見ると、フランスではサム・パティはまるでキリストのように称えられている感じさえする。それがまたイスラム過激派を刺激する。普通に考えると、イスラム教徒もいるだろう中学生にあえて聖人の風刺画を見せる必要はないし、彼が殺されたことを大統領も含めて騒ぐからまたテロが起こるという気がする。

この問題については、4年前にパリに半年いた時にさんざんフランス人の友人と議論した。まずは表現の自由。それはわかるが、なぜ宗教を巻き込むか。一つは「ライシテ」だと言う。1905年の政教分離法で、すべての宗教を認めるが、政治とは切り離してどの宗教も援助しない。これが教育の基本原則だと言う。

それからもう1つ、フランスにおける「カリカチュア」「風刺」の伝統である。フランスでは中世から宗教や政治をからかうカリカチュアが存在し、それは大きな文化だという。例の「シャルリ・エブド」誌は、イスラム教だけでなく、キリスト教もユダヤ教も仏教もからかう。権威を振りかざす宗教と政治は最大のいじるネタである。

普通の庶民にとっては、そのカリカチュアを楽しむことが一番の「表現の自由」だと友人のセルジュ君は言った。それでも見た人のなかに怒り狂って殺人までする人がいるようなムハンマドのカリカチュアを載せるのは、やはり配慮が足りないのではないか。いや、それはそいつがおかしいと来るが、それを理解しないフランス人は自己中心的ではないか。

結局、議論は尽きないが、友人はみんなカリカチュアには賛成だった。やはり、フランス人はわからない。

 

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