« 菅首相は「特高顔」 | トップページ | 東京国際とフィルメックスの間を彷徨う:その(3) »

2020年11月 2日 (月)

東京国際とフィルメックスの間を彷徨う:その(2)

東京フィルメックスの「特別招待作品」でジャ・ジャンクーとホン・サンスの新作を見た。東京国際映画祭の「特別招待作品」は基本は正月映画のショーケースだが(やめればいいのに)、こちらはコンペにはふさわしくないような巨匠の作品が中心だ。

見た2本のどちらも劇場公開は難しそうな小品というか、いつもの作品に比べたら「軽く作った」感じ。ジャ・ジャンクーの『海が青くなるまで泳ぐ』は、中国の4人の小説家を追ったドキュメンタリー。もともとこの監督は、フィクションを撮っても半分ドキュメンタリーのようだが。

山西省汾陽で2019年5月に数十名の作家を招いて開かれた文学フォーラムに端を発するという。冒頭はそのフォーラムの一般参加者の食事のシーンから始まる。なぜか迫力満点。映画は4人の作家に映画は密着取材をする。

1人は故人のマー・フォン(馬烽)だが、生前に語る映像が出てくる。彼は中華人民共和国が成立したあたりを細かに語る。次に出てくるジャ・ピンワーはまさに文化大革命に影響を受けた世代。

語る4人を描きながらも、そのまわりに普通の人々がたくさん出てくる。顔、顔、カメラをじっと見つめる人もいる。みんな今を生きる元気に溢れているように見える。ジャ・ピンワー1965年、中学1年生の時に文革が始まって、それから地方に送られて学校に行っていない。父は国民軍のスパイと罵られた。

生産隊で仕事をするうちに、書の才能が認められて大学に行けるようになった。80年代から外国文化を猛烈に吸収した。ゴッホやゴーガンが一度に入ってきた。B型肝炎にもなったが、作家になることができた。

1960年生まれのユイ・ホァは父は医者。文革が終わって大学が再開されて受けたが、2年連続落ちた。小説家を目指し、あらゆる雑誌に投稿するが、落ち続ける。1983年に北京の「文学世界」から電話があり、採用を告げられるあたりが嬉しそうで抜群にいい。立ち席の特急で北京に行き、旅費や1カ月の滞在費をもらって見物をしながら原稿を直した。

1970年代生まれの女性作家、リャン・ホンは文革を知らない。大きな問題は父と母であり、結婚した後は子供である。あまり日本とは違わない感覚が見える。4世代の語りから、中華人民共和国の成立から今に至る中国現代史が見えてくる。もちろん文革が一番大きい。

ホン・サンスの『逃げた女』は、近作のすべてと同じくキム・ミニが主人公を演じる。翻訳家で大学教授の夫と5年前に結婚し幸せな日々を送るカムヒは、夫の出張時に2人の先輩の家に泊まる。最初の夜は離婚した女性、2日目は一人暮らしの女性。いずれもふらりと男性が現れる。その翌日映画館で別の女友達に会う。彼女の夫はかつてのカムヒの恋人だった。

最初は全く何気なく、何も起こらない。男性の存在が少しずつ大きくなり、最後にドカンと来る。何気なさを装うホン・サンス節は健在だが、今回は前半が軽く淡すぎか。

|

« 菅首相は「特高顔」 | トップページ | 東京国際とフィルメックスの間を彷徨う:その(3) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 菅首相は「特高顔」 | トップページ | 東京国際とフィルメックスの間を彷徨う:その(3) »