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2020年11月21日 (土)

『ホテルローヤル』には乗れなかった

桜木紫乃の小説『ホテルローヤル』を読んだのは、たぶん6、7年前だと思う。北海道の寂しいラブホテルを舞台にした連作で、最後のラブホテルを作る話まで読んで、時代をさかのぼっていったことに気がついた。

その原作のイメージを追いながら武正晴監督の映画化を見たが、最初から最後までどこか乗れなかった。実は9月に試写で見たのだが、微妙な感想だったので公開後にアップすることにした。

小説と同じく、いくつかのエピソードが語られる。最初は廃墟となった元ラブホテル「ホテル・ローヤル」で若い女性のヌードを撮る若い男。女は嫌がっているが、男の真面目な様子を見てだんだん乗ってくる。

次は、雅代(波瑠)が高校卒業後、母親(夏川結衣)の経営するラブホテルを手伝うようになる。そこで働くミコ(余貴美子)は息子が自慢だったが、ホテルでみんなとテレビを見ていて、息子が暴力団員で逮捕されたことを知る。夫はひたすら彼女を好きなようだ。

雅代の母親は若い男と駆け落ちし、残った雅代はホテルを継ぐ。時々やってくる父親(安田顕)は体の調子が悪そうだ。ある中年夫妻は墓参りの帰りにホテルに来て、盛り上がる。このエピソードはカレンダーから2014年のことだとわかる。そして女子高生と妻に裏切られた高校教師が来る。2人は心中して、大勢の報道陣がやってくる。

2019年、雅代はホテルを閉める決意をする。大人のおもちゃを置きにきていた営業の宮川(松山ケンイチ)が挨拶に来る。宮川への思いを秘めていた雅代は告白する。そして場面が変わり、妻を捨てて若い女性とラブホテルを始める若い男が出てくる。子供ができて、それが雅代らしいことがわかってくる。『魔女の宅急便』や『その男、凶暴につき』のポスターがあるから1989年だ。

だから実はホテルをめぐる平成史なのだが、同じ頃の時代の流れを綴った『糸』のように泣けるわけではない。おかしいはずの個々のエピソードにも私は笑えなかった。それらしい場面は続くのだが、何かがつながっていかなかった。脚本と演出の両方に何かが欠けている気がしたのは、原作と比べ過ぎたからだろうか。

さて、この週末公開の映画で、昨秋に映画祭で見たので触れていない秀作が2本。スウェーデンのロイ・アンダーソン監督の『ホモ・サピエンスの涙』はベネチアで、小森はるか監督の『空に聞く』は山形で見た。東京国際で見た手塚眞監督の『ばるぼら』は苦手だった。

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