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2020年11月 5日 (木)

東京国際とフィルメックスの間を彷徨う:その(4)

東京国際のコンペで見た『皮膚を売った男』がかなりおもしろかった。監督のカウテール・ベン・ハニアはチュニジア出身でパリで映画を学んだ女性で、チュニジア・フランス・ベルギー・スウェーデン・ドイツ・カタール・サウジアラビアの合作。それで現代アートを扱った作品というので、授業の合間を縫って見た。

シリアに住むサムは、恋人のアビールがベルギー在住のシリア人外交官と結婚するのを黙って見ている。自由のないシリアから姉のつてでレバノンに行き、ふとしたことから現代アートの巨匠、ジェフリー・ゴドフロアと知り合う。サムはベルギーに行けることを条件にジェフリーの作品の一部となり、王立美術館の個展で毎日背中に描かれた絵をさらす。

シリア生まれの男が資本主義の象徴である現代アートに買われて苦悩する話かと思ったが、そう単純ではない。この作品はスイスのコレクターに買われて(週に1度身をさらす条件)、さらにオークションに出て500万ユーロの値が付く。シリアの問題と現代アートを大枠に、恋愛、サスペンスを巧みに織り交ぜ、最後にさらに話は二転、三転する。

冒頭の電車でサムがアビールに愛を告白して踊り出すシーンから最後の最後までたっぷり楽しませながら、現代社会の深淵を見せた快作。うますぎるのが欠点か。これは今年のベネチアのオリゾンティ部門で男優賞。モニカ・ベルッチがアーチストのマネージャー役でびっくり。4点。

同じく東京国際のコンペで内山拓也監督の『佐々木、イン、マイマイン』は、自主映画的な雰囲気が濃厚な映画だった。俳優を目指してバイトをする20代後半の石井悠二は恋人と暮らしていたが、別れる寸前だった。ある時、高校時代の友人、多田に会う。彼らは木村と佐々木の4人組で馬鹿なことばかりやっていた。中でも佐々木は裸踊りが得意で目立っていた。5年後、悠二はパチプロになった佐々木と会う。

現代を生きる悠二を中心に高校時代のバカ騒ぎがフラッシュバックで交差し、さらに22歳の頃も蘇る。「青春」を正面から捉える真摯な思いは伝わってくるし、共感する部分はあるが、全体に118分はいささか長い。2.5点。

ブリガリアのカメン・カレフ監督の『二月』も125分が長かった。映画は3部に分かれ、第1部は「過去」、第2部は「兵役」、第3部は「二月」。それぞれ、10歳、25歳、70歳くらいの男・ペタルが、淡々と羊飼いの祖父の手伝い、兵役、羊飼いをこなす。会話は少なく、見事に何も起こらない。そもそもいつの時代の話かもわからない。

第3部で姉から電話があって家族の話をする時に、ペタルの結婚式や家族の写真が貼られているのが写る。ペタルは兵役直前に結婚して一夜を明かす場面は出てくるがその後の話はないので、写真で想像するのみ。山村に孤独に生きる男の人生を正面から捉えた力作だが、途中何度か意識が飛んだ。何も起こらない映画の究極。3点。

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