オンライン授業を学生はどう考えているか
昨日の「毎日」の朝刊で、3面1ページを使って大学のオンライン授業をめぐる動きを論じていた。これでまず驚いたのは、韓国では国会前で学生がデモをするほど学費返還運動が盛り上がっていることだった。2万人のアンケートでほぼ100%が学費返還を望んでいるとのこと。
韓国では政府と各大学に対する訴訟も起き、政府は返還のお金を予算化したという。アメリカでも訴訟は多いようだ。それに比べて日本で学生が大学を訴訟した話は聞かない。関西学院大学では430人が署名をして返還を求め、大学は10億円の支援策を打ち出したが返還は認めなかった。
この差はどこから来るのか。九州大学の5千人の学生へのアンケートでは、オンライン授業に満足の学生が2~4年だと53%。東京大学の吉見俊哉教授は「「学生に評判がいいのは、楽だからです」。オンデマンド型だと、学生はバイトの合間に講義を飛ばし見して、重要そうな部分だけを「つまみ食い」できる。単位を取るためには「最も効率がいい」」
「オンデマンド型」というのは、事前に用意した動画などを配信するもので、ネットでライブ中継する「同時双方向型」とは違う。私の大学も当初は通信環境の整っていない学生への配慮から「オンデマンド型」を推奨した。ところがユーチューブなどで動画を用意するのはやってみると大変。そこで資料とレポート課題だけをアップする教師も多い。もともと動画録音ができない年配の教員もいる。
関学で署名の中心となった学生は、「課題授業」がほとんどだったと語っている。さて私自身は最初はユーチューブを用意してみたが、パワポに10分の音声を吹き込みだけでも何回もやり直した。そこでMeetやZoomを使ってのライブ中継を原則としている。
さて、日本ではなぜオンライン授業の満足度が高いのか。吉見教授のコメントからは、大学に対して単位を取り卒業資格を得ることしか求めていない日本の大学生像が浮かび上がる。学生の期待がこの程度だと、教員もいい加減になりやすい。そもそもオンラインで「課題授業」の問題点が明らかになったが、従来の対面授業でも教員はちゃんとやっていたか怪しい。オンライン授業でいい加減な教員が明らかになったのかもしれない。
幸いにして私が教えるのは芸術系の学部なので、学生はこれほどクールではない。大学できちんと学びたいという意思がはっきりした学生が多いように見える。それにしても、日本の大学が学びの場として社会からも学生からもあまり評価されていないのは、教員としてつらい。
ところで日本の大学で学費を半分返還したら、私立大学の3割は確実に潰れるというのをどこかで読んだ。その3割は既に定員を割っている大学だろうが、そうでなくても大学教育への国の支援が先進国で一番少ないこの国では、大半の私大はギリギリの経営だ。問題の奥は深い。
| 固定リンク
「大学」カテゴリの記事
- 博士の謎:その(4)「大学院重点化」とは何だったのか(2025.01.19)
- 博士の謎:その(3)博士号の後で(2025.01.11)
- 博士の謎:続き(2025.01.07)
- 「博士」の謎(2024.12.26)
- この暑さで授業をする大学とは(2024.07.24)
コメント