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2020年12月 8日 (火)

とうとう『鬼滅の刃』を見る

とうとう劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』を映画館で見た。もちろん漫画もアニメも見ていない。見ようと思ったのは、マスコミから連絡があったから。ひと月ほどに朝日新聞デジタル「論座」から大ヒットについて分析する原稿の依頼があった時は、即座に断った。ところが1週間ほど前、コメントの依頼が別のマスコミから来た。

最初は「見ていません」と断ったが、それでもかまわないというので配信が映画産業に果たす役割の増大について一般的に述べた。実を言うと大学で『鬼滅の刃』に詳しい助手を掴まえて、コメントの前にレクチャーを受けた。漫画が12月に最終巻が出ること、ネトフリやアマゾンでアニメを放映し、その次が映画館で見られるので期待が高まったことなど聞いた。

ニュースを見ると、年内には『千と千尋の神隠し』の興行収入308億円を軽く超えそうだ。私のコメントはその時点で出るかもしれないとのこと。もともとアニメや漫画のシリーズものは劇場版だけ見てもわからないから見ないが、今回は見ておいた方がいいかもしれないと思い始めた。

コロナ禍で映画館は2カ月閉じ、再開後も席の間引きをした。ようやく全席使い始めた頃に救世主のごとくこの映画が現れて年間興行収入を持ち上げた。2020年の映画界はそのように語られるだろう。この時代の雰囲気は、今、劇場で実感しておくべきだと思った。

とは言いつつ、シネコンで6回目の無料を使った。つまらなくてもこれなら損したと思わずに済む。とあるシネコンに行くと平日の夕方の割には客がいた。中学生、高校生、大学生が中心で、男子、女子それぞれのグループが目立つ。私のような中年おじさんはほぼいない。

映画の前に15分予告編があったが、約10本のうちアニメが大半。それも東宝シネマズなのに、松竹、東映、ワーナーなどのアニメも流れる。映画館にとってはこの収入も大きいだろう。

さて映画そのものだが、私はよしあしについて論じる資格はない。しかし、全く知らないで行ってもある程度は楽しめると思った。ポイントはいくつかある。まず「無限列車」が鬼に襲われ200人の乗客が殺されそうになるのを、煉獄杏寿郎を「柱」とする炭治郎など鬼殺隊の4人が守るというドラマがある。ここで面白いのは、鬼は殺すために人間を夢に誘うという構造だ。

炭治郎も亡くなった家族との楽しかった日々の夢を見る。そして列車は鬼たちによってまるで細菌の拡大図のような茶色のゴム状のもので包まれてゆく。炭治郎が甘美な夢から抜け出して現実に戻る時に凄まじい葛藤。「夢」や「無意識領域」という言葉が普通に出てきてドラマとなる。

そして体を切られてもすぐに再生する力を持つ猗窩座(あかざ)と杏寿郎が対決するラストは少しくどいが心を打つ。いいのは子分の炭治郎、伊之助、善逸などが猗窩座を慕い、終わりに彼が死にゆく姿を看取ってその意思を継ごうとするところ。

自然や周囲の描写は実写とアニメを合成したのだろうが、よくできている。それはいいが、茶髪や赤髪や猪の顔の登場人物にはびっくりだし、いつものように目が大きすぎ、私は最後まで落ち着かなかった。人物の名前の複雑な漢字も妙だ。

そういえば時代設定が大正時代なのにも驚いた。観客の感情を動かすのに、日本の伝統的な部分に触れている感じがした。家族を大事にし、師弟関係を重んじて、それを壊す外部の敵と一体となって戦う。親や先輩の意思を若者が受け継ぎ、永遠に続く。いやな部分も含めて日本的情感を巧みに操っている気がした。

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