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2020年12月 2日 (水)

東京国際映画祭のまとめのまとめ

東京国際映画祭は11月9日に終わったが、昨日の「朝日」朝刊にそのレポートが載ったので驚いた。ひと月近くたっており、もはや月刊誌の域である。ちなみに「読売」は11月14日、「日経」は11月12日と13日と終了後数日で書いている。

「朝日」の非常識は内部にいたのでなんとなくわかるが、それでもせっかく出たので中身を比較してみたい。ほかの新聞も探したが見つからなかったので、とりあえず3紙の「まとめのまとめ」をする。

「朝日」の記事はほとんど作品に触れていないのが特徴だ。石飛、小峰の両記者は、是枝裕和監督と同時期に開催された東京フィルメックス理事長の市山尚三氏へのインタビューが中心。是枝監督は、映画界からトップやスタッフを出してきたこれまでの体制を批判する。今年はトップに外務省出身の安藤裕康氏が就任して変化の兆しが見えたので協力した、という論調。

その左下に作品選定に関わった金原由佳さんへの佐藤美鈴記者のインタビューで、かろうじて「TOKYOプレミア」の作品紹介が載っている。「国境」「女性」「コロナ」がテーマというが好意的な扱い。「朝日」のポイントは是枝、市川、金原という今年初めてこの映画祭に関わった3人に「改革元年」の手ごたえを聞いている点だ。

これはちょうどかつて左翼系の学者に自民党の批判を聞いたような感じで、わかりやすいが安易でもある。自分たちの考えを、同じ方向の人々に言わせているだけだから。それにしても、こんなに遅く出たから作品にあまり触れないのはよかったかも。

「日経」は(上)で近藤佳宣記者が「TOKYOプレミア」の秀作に触れてこの10年セレクションを担当する矢田部吉彦氏の「テーマは移民、格差、ジェンダーでここ10年変わらない」との言葉を引く。関原のり子記者は同じ部門のアジアの作品を紹介する。

(下)は古賀重樹記者が安藤裕康チェアマンや是枝監督の言葉を引きながら映画人交流を「改革への布石」とする。コンペの有無については是枝監督の「コンペを残すなら哲学を示すべき」とアジア映画担当の石坂健治プログラマーのアジアの若手向けにコンペを絞れば、という言葉を引く。(下)は「朝日」に近いが、「アジア交流ラウンジ」を高く評価しているのが特徴か。

「読売」は一番従来型で、入場者数や作品数をまず書き、「TOKYOプレミア」の秀作に触れる。「東京フィルメックス」は左下でじっくり作品に触れていた。「アジア交流ラウンジ」や「TIFFトーク」も取り上げて、「レッドカーペット」の是非を問い、六本木と日比谷と分かれた会場問題も触れる。

「文化部映画班」で記者名がないのも「読売」らしい。最後の「コロナ禍を奇貨として新たな試みに挑戦した今回の流れをくみ、来年は大胆な一手を期待したい」というまとめも、「朝日」や「日経」(下)のもう戻れない、さてどうすると脅している感じに比べると穏便。

それにしてもこれだけ安藤裕康チェアマンへの支持が集まると、安藤→是枝路線は続かざるをえないだろう。従来から関わってきた映画会社出身の人々は悔しいだろうけど。

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