映画館の暗闇で転ぶ
年を取ると、転ぶのが危ないとはよく聞く話である。私の母も玄関で転んで骨折してから入院が始まって、リハビリ施設、再度入院となって亡くなった。そんなに年でなくても、50歳を過ぎるとちょっと転ぶだけで骨折をするという。
先日、学生企画の映画祭をやっている渋谷の映画館で転んだ。見ていた映画が終わり、クレジットが始まったのでそのことを学生に知らせようと席を立った。出口の階段で足を踏み外してバランスを失い、頭を金属のドアにぶつけた。
一瞬強い痛みを感じたがそのままにして「ありがとうございました」と始めたら、学生に「血が出てますよ」と言われてトイレに駆け込む。かなり派手に血が出ていたので、トイレットペーパーをそこに当てて映画館の事務所に行った。バンドエイドをもらって貼ったが、そこに血が滲んでかなり目立った。
それから2日、毎日2回ずつバンドエイドを変えると、出血は止まった。3日目にお客さんの前で短いトークをやるのでバンドエイドなしで家を出たが、よく見ると傷跡は明らかだ。
実は今回の映画祭では、既に2度倒れそうになっていた。いずれも暗い映画館の中を歩いた時だ。ふと足が浮いたが、ぎりぎりで転ばずにすんだ。気をつけないといけないと思っていた矢先にドアに激突してしまった。足を骨折しなかった分、幸いと思うべきかもしれない。
以前に比べて知らないうちに運動神経が落ちている。これまでならとっさに出ていた手足がもはや動かない。実は2015年春に東銀座駅を出て松竹の試写室に行くところで、信号が変わる前に横断歩道を渡ろうと走って転んだことがある(ここに書いた)。その時は顔と腕に派手にけがをした。それ以降、道を全速力で走ることはやめた。かつては元気が余っていたのか、道路を走るのが大好きだった。
これからは映画館の暗闇を歩くのを止めよう。試写でクレジットが出てすぐ席を立つことはしにくいが、映画館でつまらない映画の後は余韻もないので、エンドマークと同時に出ていた。フランスだと小さなクレジットに代わった瞬間に半分明るくなるのでいいが、日本は最後まで暗い。だから今後はクレジットを最後まで見ることに決めた。
これからは、ひとつ、ひとつ、老いを感じながら、やってはいけないことを増やす日々が続くのだろう。
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