角川武蔵野ミュージアムに失望する
埼玉県の東所沢駅にできたばかりの角川武蔵野ミュージアムに行った。いまだにミュージアム(日本語だと美術館と博物館に分かれる)というものに関心がある。いわゆる美術展ではなく、千葉の国立歴史民俗博物館で見た「性差(ジェンダー)の日本史」のような展覧会の枠を超えたような展示が大好きだ。
だから角川が埼玉に新しい「ミュージアム」を作ったと聞いた時、興味が沸いた。花崗岩を積み上げた隈研吾の建築もカッコいいし、本をミュージアムの展示にするという発想が新しいと思った。
行ってみて正直、失望した。まず駅から遠い。武蔵野線東所沢駅から歩いて11分。バスはなく、行きはタクシーで帰りは歩いた。そこはミュージアムだけでなく、「ところざわサクラタウン」という広大な敷地で、角川のオフィス、書籍製造・物流工場、見本市会場、ホテル、神社、公園などが一体となっている。それならばバスくらいあってもいいのに。
ミュージアムは1階から5階まであった。1日券は何と金土日は4000円。まず「本棚劇場」の4階に行く。そこは一言で言うと、自由に並べられた図書館。松岡正剛氏の監修で「9つの文脈」で約2.5万冊の本が並ぶ。360度で8メートルの高さに広がる「本棚劇場」の部分は壮観だが、上の方には立ち入れない。
そもそもそこにあるすべての本は買うことも借りることもできない。なかにはあちこちに大小の椅子があるので、自由に手に取って読むことができる。ちょうど代官山の蔦屋書店に近い雰囲気だが、あちらは無料。
本棚の間に「荒俣ワンダー秘宝館」がある。そこは植物や動物の標本などが本物も偽物も含めてずらりと並ぶが特におもしろくはない。唯一展覧会らしいのは「エディットアンドアートギャラリー」の米谷健+ジュリアの「だから私は救われたい」という展示。暗い中に真っ白な食べ物の並ぶ食卓や大きな黄緑の蜘蛛などが浮かび上がって、それなりに見応えがあった。
それ以外は、ただ気に入った本を手に取りながらだらだらと過ごすだけの空間。残念ながら私にはその余裕はない。5階には武蔵野ギャラリーや武蔵野回廊があるが、角川書店創業者の角川源義を称える展示などでピンと来ない。
3階のEJアニメミュージアムは別料金で一日券でも入れないから驚く。そして1階にはグランドギャラリーとマンガ・ラノベ図書館がある。グランドギャラリーで開催中の「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020」は日本中の妖怪を集めたものだが、パネル展示が多くて刺激に乏しい。せめてお化け屋敷的な怖さがあればいいのに。
また4階の図書館に戻って30分ほど時間を過ごしたが、やはり落ち着かないので出た。これで4000円は高すぎる。
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