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2020年12月20日 (日)

学生映画祭も10年目:その(4)中国、台湾、香港

一般に映画祭は、その準備は長く大変だが、始まってしまうとあっという間に終わる。とりわけ1週間はすぐだ。それでも毎日1度は劇場に足を運んでいると、終わるとちょっと寂しい。

今回の「中国を知る」というテーマはある女子学生からの提案で、父親が一時期中国に勤務していた頃に中国のことを考えたことから生まれた。いろいろな案のなかで学生の多数決と劇場の意見でこれが採用されたのは、新聞に取り上げてもらいやすいだろうという理由もあった。

実際に「日経」「東京」は夕刊社会面トップ、「毎日」、「朝日」は都内版での掲載だったからその狙いは当たった。「読売」夕刊文化面の紹介と「産経」のネット記事もあったから、全紙を制覇したことになる。

取材では聞かれなかったが、一般の方からセレクションについて抗議や意見があったのは、今回が初めてだった。複数あったのが、台湾の方や台湾に詳しい日本人からの「台湾は中国の一部ではない」というもの。

この映画祭には『珈琲時光』と『湾生回帰』という台湾の監督の映画が2本あった。いずれも日本と台湾の深い関係を見せる映画で、その奥には誰もが知るように19世紀末の日清戦争とその結果としての台湾の日本への割譲という歴史がある。日本と中国の関係を論じれば台湾や香港に触れざるをえないと学生たちは普通に考えた。

しかし先方は題名が「中国を知る」なので、そこに台湾の監督の映画を含むのはけしからんということだった。こういう意見は全く想定していなかったので驚いたし、そのように受け取られるのかと学生にも勉強になった。

それから中国の留学生からなぜ香港の雨傘運動のドキュメンタリー『乱世備忘』をやるのか、という意見もあった。中国人留学生の多いある大学の教員によれば、今の若い中国人には香港の雨傘運動などの民主化運動が大嫌いな者が多いという。「あいつらだけ自由を主張しやがって」というのだろうか。これまた驚きの指摘だった。

またなぜ『イップマン 序章』をやるのですか、と聞いてきた中国人留学生もいた。ほかの作品がアート志向なのに、一本だけ違うと。『ラストエンペラー』も『香港の夜』も娯楽作品だし、『イップマン』シリーズは映画好きからも評価が高い。それに『序章』は日中戦争の事実をかなりきちんと見せている。

実は私は今回の映画祭で初めてこのシリーズを見た。いやあ、おもしろかった。イップマン(葉門)という実在の人物をもとに自由に作ったクンフー映画で、日本の将校も池内博之がきちんと演じている。日本兵が怒ると平気で中国人を銃殺するのも、実際にあったことだろう。

不思議なことに、右翼からの抗議はなかった。この映画もそうだし、日本軍の中国での残虐な行為を見せる映画は南京事件を正面から扱った『ジョン・ラーベ』を始めとして、『未完の対局』や『ラストエンペラー』などいくつもあった。もはや右翼はいなくなって嫌中、嫌韓のネトウヨだけなのだろうか。

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