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2021年1月27日 (水)

『43年後のアイ・ラヴ・ユー』の普遍性

マーティン・ロセテ監督の『43年後のアイ・ラヴ・ユー』を見た。まず予告編でなぜかしら身につまされて「ダサくても見たい」と思った。それから「朝日」で石飛徳樹記者がこの映画を褒めて「年を取るのは必ずしも悪いことではない」と宣言していたから。

見始めて不安になった。監督はマーティン・ロセテというスペイン人で、スペイン=フランス・=アメリカ合作の英語の映画。ヨーロッパ大陸の監督が英語で撮る時は、気をつけた方がいい。世界市場を狙った金儲けのためがほとんどだから。

この映画もそういう部分はある。設定は安易で、だれにでもわかるいかにもいかにものユルい話が進むから。主要な俳優はともかく、老人介護施設のスタッフなど脇役は明らかに英語がおかしいし、演技もわざとらしい。

元演劇評論家の老いたクロードは、新聞でかつての恋人だった女優のリリアンが認知症で老人介護施設にいることを知る。友人の助けを借りて、アルツハイマーを装い、その施設に入居する。そしてリリアンに近づいてあの手この手で記憶を蘇らせようとする。

そもそもアルツハイマーと騙して介護施設に入ることなど現代では無理だろう。仮にできたとしても新たな入居者が元女優に毎日近づこうとしたら、みんなが止めるに違いない。そんな常識は関係ないとばかりに話はスルスルと進む。クロードは彼女の部屋にユリの花を手配し、思い出のガーシュインの曲を聞かせる。

後半、クロードの孫の劇団がやってきてシェイクスピアの『冬物語』を演じる。その台詞をリリアンはしっかりと思い出すのだが、そのあたりがちょっと泣かせる。さらにその後のリリアンの夫とクロードの会話を聞いていると、いつの間にか「結ばれなかった愛」の普遍的な物語に見えてくる。

結婚していてもしていなくても、みんな「結ばれなかった愛」の記憶はあるだろう。私は見ながら自分のことをいろいろ思い出した。あの女性はこの女性は今どうしているだろうかと考えた。人生は結局こんなもんだなと思いを巡らした。

主人公のクロードを演じるブルース・ダーンが、およそ感傷的にならずクールで渋い。その友人役のブライアン・コックスもなかなか。リリアンを演じるカロリーヌ・シロルはフランス人だけに英語に難があるし若い頃の姿と違い過ぎるが、認知症の元スターらしくはある。そんなこんなで最近中国映画ばかり見ている私には、実に快い気分転換になった。

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