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2021年1月 7日 (木)

覆面で見た『花束みたいな恋をした』

たぶん生まれて初めて題名もスタッフもキャストも知らないままに映画を見た。公開日も決まっていなかったが、ずいぶんたって1月29日公開の『花束みたいな恋をした』だったとわかった。なぜ見に行ったかと言えば、ほんの少しだけ制作に協力したので8月の初号試写に誘われた。

「協力」といっても、リトルモアの孫家邦さんに、ある年の学生企画の映画祭のチラシとポスターを送ってくれと言われて送っただけ。結局映画には使われなかったが、返却の際にはお礼としてヨックモックのお菓子まで送られてきた。

それから半年ほどたって、孫さんから電話があって、「映画ができたので完成披露に来てくれないか」と言われた。指定の日時に空いていたので、暑い日にのこのことイマジカの試写室に行った。行くと関係者ばかりで落ち着かなかったし、資料どころかチラシもない。

「これはどんな映画ですかね」と聞くのも間が抜けていたので、そのまま始まるのを待った。菅田将暉と有村架純が出てきて話し出す。『花束みたいな恋をした』という題名が出てきた。

2020年に麦(菅田将暉)と絹(有村架純)が再会する。彼らはお互いに驚くが、それから2015年に話が戻り、2人の出会いからの5年間が語られる。出会ったのは京王線の明大前駅で最終電車を乗り過ごしたから。2人はファミレスに行き、そこにいた押井守に驚いたり、「ミイラ展」を見たい話をしたり。

2人とも大学4年生だった。絹の父親は大手広告会社勤務で、麦の父親は新潟で暮らしていた。そんな2人は好きな本や映画などが一致して「こだわり」のある生活を目指す。年末には調布駅から徒歩30分の眺めのいいマンションに同居するが、大学を出ても2人ともフリーターのまま。

しばらくして絹は簿記の勉強をして医療事務を始める。父からの仕送りが途絶えた麦は物流会社に勤め始める。絹はふとしたことからイベント会社(社長はオダギリジョー)に勤め始め、麦の仕事はだんだん忙しくなる。2人の間には隙間風が吹き始める。

「ミイラ展」を見たり、映画『希望のかなた』をユーロスペースに見に行ったり。あるいは私の知らない劇団を見に行ったり、静岡の「さわやか」という巨大なハンバーグで有名な店(知らなかった)に入れなかったり。5年間を見せる具体的な名詞がノスタルジックに出てくる。

なかなかうまい構成だなと思ったら坂本裕二のオリジナル脚本で、細部にこだわった丁寧な演出だと思ったら土井裕泰監督だと、終わりのクレジットでようやくわかった。ヒットメーカーの2人が作った愛すべき小粒の映画と言うべきか。平成の終わりから令和の初めが既に「歴史」として語られていたことにも驚いた。これは今を生きる20代の若者に「刺さる」気がする。

あと数カ月で還暦の私には、最近の5年間なんて本当にあっという間に過ぎたのだが。

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