« 体が元に戻らない | トップページ | 20年前はイタリア年だった:その(1) »

2021年1月 4日 (月)

年末に見た『Mankマンク』

デヴィッド・フィンチャー監督の『Mankマンク』を劇場で見た。ネットフィリックスで公開中なのは知っていたがずっと前に解約していたし、『Roma ローマ』と同じく白黒の凝った映画のようなので映画館で見たいなと思っていた。ところがアニメ『フナン』を池袋に見に行ってその映画館でやっていることを知った。

『ローマ』や『アイリッシュマン』の時もそうだったと思うが、一切宣伝をしていない。上映館で予告を流すくらいでどこでも宣伝を見たことがなかった。映画館で知ってユーチューブで予告編を見ると、いかにも面白そうなのですぐに見に行った。

これが、見ていてほかの観客はわかるのかと心配になるほどマニアックだった。まず、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』(1941)を見ていなければ、たぶん話にならない。『市民ケーン』の共同脚本のハーマン・J・マンキィウッツ(=マンク、ゲイリー・オールドマン)が脚本を書く過程を追ったものだから。

ウェルズ自身(トム・バーク)が何度も出てくるし、映画自体に過去の回想が何度も挿入されるのだから、『市民ケーン』と同じ作り。白黒の奥の深い画面で、遠くから人がドアを叩いてやって来るシーンなどそっくりの映像もある。

そして過去のシーンは、マンクがMGMを率いるルイス・B・メイヤー(アーリス・ハワード)や若手プロデューサーのアーヴィング・タルバーグ(フェルディナンド・キングズレー)、そしてそれを支持する新聞王ハースト(チャールズ・ダンス)やその愛人のマリオン(アマンダ・セイフライド)が出てくる。『市民ケーン』はハーストをモデルにした映画でマリオンに当たる若い女性も出てくるから、やはり『市民ケーン』を見ていないとしょうがない。

おもしろいのは、脚本家のマンクがマリオンと仲が良かったことやハーストともうまくやっていたことがこの映画で明らかになるあたり。それからマンクの友人のシェリーが、大統領選で共和党の候補を勝たせるためにインチキニュース映画を作らされるあたりも、今日の「フェイクニュース」を考えると興味深い。

最後のハースト家の宴会で泥酔したマンクがメイヤーやハーストやマリオンを前にして言いたい放題に喋りまくるが、これも多くは『市民ケーン』に出てくるエピソードと繋がっている。マンクの弟のジョーがいい感じで何度か出てくるが、彼は後に『イヴの総て』や『クレオパトラ』を監督する巨匠、ジョーゼフ・L・マンキィッツだと考えると感慨深い。

最後の『市民ケーン』がアカデミー賞の脚本賞を取った時のウェルズやマンクのコメントも楽しい。そのほかにも当時のMGMの大作の話がいくつも出てくる。つまりは最低でも『市民ケーン』を見て、それから戦前のアメリカ映画史を少し読んでおかないとあまり楽しめないのではないか。チラシも劇場パンフも詳しいホームページもないのだから。

実は私はまたネットフィリックスに加入して、もう一度見たいと思っている。ネトフリの思うつぼかもしれない。

|

« 体が元に戻らない | トップページ | 20年前はイタリア年だった:その(1) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 体が元に戻らない | トップページ | 20年前はイタリア年だった:その(1) »