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2021年2月23日 (火)

『世界で一番しあわせな食堂』を楽しむ

フィンランドのミカ・カウリスマキ監督の『世界で一番しあわせな食堂』を劇場で見た。弟のアキ・カウリスマキの映画は毎回見ているが、ミカの方は『ヘルシンキ・ナポリ/オールナイトロング』(1987)から見ていないかもしれない。見に行ったのは映画評を見たから。

そこにはフィンランドの田舎町に中国人のシェフがやってきて寂れた店を繁盛させると書かれていた。それだけで楽しそうではないか。『かもめ食堂』(2006年)みたいでもあるし。それに中国料理が実においしそうという。

30代らしき中国人チェンは息子と共にバスで田舎町に降り立つ。「フォントロン」というフィンランド人を探していると言い、町で1つしかない食堂に陣取って客に次々と尋ねる。女主人のシルカがそこで出す料理はジャガイモとソーセージのみ。そこに中国人の団体がやってきて、チェンが中国料理を振舞うと大好評。

チェンは上海の料理人だった。フォントロンは彼のレストランを救った恩人のフィンランド人。その恩人が亡くなっていたことがようやくわかり、チェンは帰ろうとするが、地元の人々は既にチェンの料理を好きになっていた。

近くで取れるトナカイのシチューや白身魚のあんかけを食べているうちに、常連の老人たちは健康を取り戻し、介護施設からも大勢の老人がやってくる。チェンはシルカに誘われて湖で魚を取り生理痛のシルカのためにクコ入りのスープを作り、常連の老人2人に誘われてフィンランド式のサウナを経験したり湖を舟で回ったり。

後半に出てくる歌がいい。シルカと参加するダンスパーティーで歌われる女性歌手や舟で歌う老人やそれに応えて歌うチェンなど、みんな気持ちよさそうに自然に歌う。そしてそれがチェンとシルカの愛に向かう。こんな楽園のような生活は夢物語だろうと思いつつも、快楽がみなぎる。

医食同源の中国料理をあまりに理想化しているし、フィンランドもまた美しすぎる。それぞれの結婚の過去を抱えたチェンとシルカの恋愛も出来すぎだ。だから見ていて作りもののようにも見えるが、何度も心地よい歌があるから信じられるのだろう。現実に疲れた人に確実に効く一本。

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