『藁にもすがる獣たち』にうなる
韓国映画『藁にもすがる獣たち』を見た。これがよくできたB級サスペンス映画で何度もうなった。有名な俳優も揃っているのでてっきりベテラン監督かと思ったら、キム・ヨンフンの初長編監督・脚本という。
まず、ルイ・ヴィトンのバッグが写る。ある男がそれをホテルのロッカーに入れる。翌日、ホテルの従業員はそれを見つけて開けると大金があった。彼はそれを倉庫に隠す。テレビではバラバラ死体があちこちで見つかったニュースが流れている。
「藁にもすがる」ほど金が欲しい人間が何人も出てくる。家業だった海鮮レストランを潰したジュンマンはホテルで働き、妻は空港で清掃員をする。そのうえ、認知症の母(ユン・ヨジョン)は妻をいじめる。
主婦だったミランは株の投資に失敗してバーで働くが、毎晩のように会社員の夫からDVを受ける。彼女はバーの顧客と出会い、夫の殺害を提案する。ミランのバーを経営する女社長ヨンヒ(チョン・ドヨン)は大金を求めてミランに近づく。元恋人のヨンヒが抱えた借金に苦しむテヨン(チョン・ウソン)は空港の税関に勤めるが、借金取りに脅されている。
10名ほどが最初は数名ずついくつかの場面に分かれて進むが、だんだん関係ができてきて、最後にすべてがピシッと絡み合う。半分以上は殺されているけれど。男たちよりも女たちがより強い生きる意志を見せるのもいい。後半に彗星のごとく美人社長ヨンヒが出てきて、どんどん物語を引っ張る様子は実にカッコいい。
B級としてよくできていると思うのは、この語りのうまさだけではない。出てくる人物の面構えがもう役にぴったりで、テヨンの相棒「デメキン」や彼を脅す借金取りなど顔を見せただけでうれしくなる。なんとなく日本のかつての任侠映画を見ているような感じか。
曽根啓介の同名小説が原作という。HPを見たら彼のコメントで「お見事です。恐れ入りました」とあるが、私もそんな感じを持った。
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