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2021年2月26日 (金)

「接待」をめぐって

総務官僚10数名に東北新社が接待をしたことが、大きなニュースになっている。東北新社は映画配給もしているので、ちょっと気になる。映画業界では「新社」と呼ばれていて、配給以外にCM制作やスーパー経営までしているかなり異色の存在だ。しかし個人的には「接待」という行為に引っかかった。

何度も書いたように、かつては新聞社の事業部で展覧会を中心にイベントの企画をする仕事をしていた。2005年頃までは国税庁が新聞社の接待費を精査せずに経費として認めていたこともあり、利益を生む(可能性のある)事業部では青天井だった。

1993年に役所から転職してびっくりした。大英博物館展の展示作業のために京都に出張する前に、「イギリス人の接待のために20万円くらい会社から仮払いをしてもらったら」と言われた。イギリスからは学芸員が1人と展示技術者が3人来ていたが、1週間、毎晩のように経費で夕食をした。

そもそも大英博物館には億単位の借用料を払っていたし、来日した彼らにはホテル代と別に日当を1万5千円払っていたから、その必要はなかったはず。それでもそれが普通だと言われれば、展示作業の合間に夕食の場所を探して予約をしていた。飽きないように京料理、中華、豆腐料理、イタリア料理など毎晩変えて、鴨川の納涼床でのしゃぶしゃぶにも行った。

オープニングでは軽食を出し、さらに関係者の夕食会もあった。二次会のカラオケ代まで経費で落としていた。接待はそれなりに面倒で辛い部分もあるが、それでも毎晩何を食べるか考えるのは楽しかったし、ありがたがられるのも気分が良かった。

外国人にくらべると日本人相手の接待は多くはなかったが、それでも美術館学芸員との長時間の展覧会打ち合わせの後に飲みに行って新聞社の経費で払うのはざらだった。とにかく立て替えて後で領収書と共に相手の名前や目的を会社に出せば、誰も文句を言わなかった。

学芸員を連れて海外に行くと、高級レストランによく行った。パリは1人で出張することも多かったが、パリに住む友人を招待して経費で落とすこともあった。おもしろかったのは、2度目にポンピドゥー・センター展をやった時は、学芸員と出張した時に先方から何度か食事に招待されたこと。聞くと1度目に日本で歓待されたからという。接待文化を世界に広めているのかと笑ってしまった。

だから東北新社が総務官僚を接待したというニュースを聞いても、私には怒ることはできない。過去の後ろめたさが広がるだけである。人間は弱いので、接待するのもされるのも、すぐに誘惑に負けてしまう。もちろん、接待をしてもされてもあくまで仕事なので本当に楽しんだことはないが。

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