20年前はイタリア年だった:その(4)
前にも書いた「コスミック出版」の安売りDVD10枚組「イタリア映画コレクション」シリーズで、『2ペンスの希望』をメインとしたボックスにアントニオーニの『椿なきシニョーラ』(1953)があった。『愛と殺意』(50)でデビューしたルチア・ボーゼが主演なので見たかった。
この映画は日本では未公開だが、見ると相当の傑作だった。そのうえにいろいろな意味でメタ映画で興味深い。まず、主人公のクララはミラノの売店で偶然にスカウトされた人気スターという設定だが、これはまさに演じるルチア・ボーゼに実際にあったことだ。
そして売り出し中の新人女優であるクララは、ローマのチネチッタで撮影をしている。もちろん今もある本物のチネチッタで撮られている。その前にローマ市内で彼女主演の「女よさらば」のテスト試写があり、彼女が売れると見たプロデューサーのボラは出演シーンを増やす。彼女を発掘したプロデューサーのジャンニは、彼女を好きになってしまい、結婚を迫る。そしてその両親を先に説得して遮二無二結婚してしまう。
ジャンニは、妻となったクララがセクシー女優として売り出すのに反対し、自ら監督して歴史劇「ジャンヌ・ダルク」を作る。これはベネチア国際映画祭で上映されるが、上映中に聞こえる不満の声にクララは会場を飛び出してしまう。これも撮影は今も使われている映画祭のメイン会場「映画宮殿」。
ジャンニは大金をつぎ込んだ「ジャンヌ・ダルク」で大きな借金を抱え、クララはボラに頼んで前から企画があったセクシー映画「運命のない女」に出る。これは大当たりで夫婦の借金はなくなるが、クララは「顔がいいだけ」「演技はまるでダメ」と陰口をたたかれる。ジャンニから心が離れたクララは、外交官のナルドと付き合い始める。
美人の売店の売り子がいきなりスターになって有名プロデューサーと結婚するが、うまくいかない。愛人の外交官につぶやく言葉に「22歳ですべてを失うなんて」という言葉があるが、世界中の映画界で起きていることだろう。アントニオーニはそのリアルな感じを突き放したようにクールに見せ、どの人物にも感情移入を許さない。
ベネチアには東京のイタリア映画祭の準備のために1999年から毎年通ったし、チネチッタはベネチアの後に試写を組んでもらったので懐かしかった。当時は35㎜プリントで、これはつまらないと思ったら手を挙げると次の映画に移った。今や試写はリンクを送れば済むので、映画を選ぶためにチネチッタに通うなんてもはや昔話となった。
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