『狼をさがして』を見て
「東アジア半日武装戦線」という言葉はよく覚えている。1974年に三菱重工爆破事件などを起こしたグループで、現場で血だらけになった会社員たちの写真と共に中学生の時に強く印象に残った。韓国の女性監督、キム・ミレがそのドキュメンタリーを作ったと聞いて、劇場に見に行った。
「東アジア半日武装戦線」という言葉はよく覚えている。1974年に三菱重工爆破事件などを起こしたグループで、現場で血だらけになった会社員たちの写真と共に中学生の時に強く印象に残った。韓国の女性監督、キム・ミレがそのドキュメンタリーを作ったと聞いて、劇場に見に行った。
先日、岩崎昶(1903-1981)について書いたら、映画評論家の秦早穂子さんからメールが来た。「岩崎さんの記事、懐かしく拝読しました」という。私自身は会ったことはなかったが、その名前は特別な存在として大学院生の時に覚えた。今思うとその時にはもう亡くなっておられたが。
リー・アイザック・チョン監督の『ミナリ』がアカデミー賞の6部門にノミネートされて公開中だ。実は2月末に最終試写で見たが、正直なところ「えっ、これが」と思ったので、公開後にアップすることにした。
八丁堀に行く用事があったので、足を延ばして東京都現代美術館まで行った。ライゾマティクスというグループは、これまでこの美術館のテーマ展で作品を見たが何がいいのかよくわからなかった。とにかく現代的な映像を見せるのは間違いないのだが。
ここでも何度も取り上げたように、最近の韓国の若手監督の第一回長編はずいぶんレベルが高い。『夏時間』の監督、ユン・ダンビは1990年生まれの女性と聞いてそれだけで見たくなった。ようやく劇場で見たが、『はちどり』ほどではないにしても期待を裏切らなかった。
吉見俊哉著『五輪と戦後』をようやく読んだ。昨年4月末に出た時に買ったが、その頃はちょうどオリンピックが延期になったこともあって、何となく読む気が失せていた。ある時気になって手に取ったら、めっぽうおもしろくて厚いのに最後まで読んでしまった。
4月17日公開の代島治彦監督のドキュメンタリー『きみが死んだあとで』を見た。1967年10月8日に第一次羽田闘争で亡くなった山崎博昭をめぐるドキュメンタリーである。見ながら、1958年生まれの監督がなぜこの映画を撮ったのだろうかと考えていた。
最近、映画評論家の岩崎昶(あきら)について考える機会があった。小津安二郎と同じく1903年生まれの岩崎昶は日本の映画評論家の草分け的存在だが、そのなかでも特別だ。ほかの評論家と違うのは、戦時中に2年も「ブタ箱」に入っていたことが一番大きい。
監督・前田弘二、脚本・高田亮の『まともじゃないのは君も一緒』を劇場で見た。このコンビは『婚前特急』(2011年)が抜群のノリの傑作喜劇だったし、『わたしのハワイの歩きかた』(14)もそれなりによかった。
大学教師の春は憂鬱だ。どうも自分が機械の歯車になったような気がする。顔を見慣れた4年生はいなくなり、すぐに1年生がやってくる。もちろん会社にも定年もあれば新入社員の入社もあるが、大学のように一挙に1/4が入れ代わることはない。
アーロン・ソーキンの脚本・監督『シカゴ7裁判』を劇場で見た。昨年10月からネットフィリックスでやっていたが、だいぶ前から解約していた。最近発表されたアカデミー賞のノミネートに多数並んでいたので急に見たくなり、劇場を探して下高井戸まで行った。
先日、初めて読んだ『海辺のカフカ』について書いた。学生時代の村上春樹をめぐる思い出が長くなり、小説そのものについてはあまり書けなかったのでもう少し書く。この小説の根底には、多くの村上作品と同じく1968年の学生運動と第二次世界大戦がある。
またアンスティチュ・フランセ東京の「映画/批評月間」で1本新作を見た。エマニュエル・ムレ監督の『言葉と行動』で、これはフランスの国際映画ジャーナリスト賞「リュミエール」をもらっていたので、期待していた。ちなみに前年は『レ・ミゼラブル』だから信用できる。
恵比寿に行く用事があって、東京都写真美術館で「白川義員写真展 永遠の日本」と「澤田知子 狐の嫁入り」の2つの個展を見た。白川は風景写真の巨匠で、澤田は変装したセルフポートレートを撮り続けるトリッキーな作家だが、この2つが妙に重なって見えた。
このブログを読んでいる方はわかると思うが、第二次世界大戦中に各国で作られた映画に数年前から関心が出てきた。日本もそうだし、韓国や中国の映画もおもしろい。最近、同時代のフランスやイタリアの映画を見ているが、これまた興味深い。こんなものをよくナチスドイツが認めていたなという作品がたくさんある。
先日、私が勤める大学の先輩教授、田島良一氏の最終講義をオンラインで開催した。と言っても私がやったのは、昨年11月に「やろう」と言い出して本人を説得して日時を決めて当日の司会をしただけ。あとは卒業生2名や専任講師、助手の方々が実務をこなしてくれた。
アンスティチュ・フランセ東京の「映画/批評月間」でソフィー・ルトゥルヌール監督の『奥様は妊娠中』(2020)を見た。原題はenorme=「巨大な」だが、それではさすがに邦題にならないのだろう。見ながらまた「フランス映画のある種の傾向」を考えた。
そのコンセプトに久しぶりにびっくりした展覧会を見た。練馬区立美術館で4月18日まで開催の「電線絵画展」のことで、チラシには「富士には電信柱もよく似合う」というキャッチコピーで小林清親の富士山の手前に電柱や電線が描かれた絵があった。
ロシアのイリア・フルジャノフスキーとエカテリーナ・エルテリ監督の『DAU.ナターシャ』を見た。旧ソ連の独裁体制を再現した映画というので、予告編で見て興味が沸いた。結果は予想に違わず、悪夢のような実に気持ちの悪い映画だった。
先日フランツ・カフカの短編集を読んだせいか、だいぶ前に買ってあった文庫本の村上春樹『海辺のカフカ』(2002)を読んだ。私はもともと村上春樹とは相性がよくない。大学に入った年に2作目の『1973年のピンボール』(1980)が芥川賞の候補になり、読んだのが初めてと思う。
東北大震災から10年がたった。新聞やテレビでは特集が続く。そんななかで小森はるかと瀬尾夏美の共同監督による『二重のまち/交代地のうたを編む』を劇場で見た。小森はるかの映画は、これまでに被災地にカメラを向けた『息の跡』や『空に聞く』を見ていた。
国立新美術館で5月10日まで開催の「佐藤可士和展」を見たが、何がいいのかさっぱりわからなかった。もともとこのデザイナーとは相性があまりよくない。この展覧会の会場でもある国立新美術館が2007年にオープンした時、その薪のような文字やマークを見て「なんだろう」と思った記憶がある。
藤井道人監督の『ヤクザと家族』を劇場で見た。同じように現代のヤクザの生きづらさを描いた西川美和監督の『すばらしき世界』を見たばかりなので、比べると興味深かった。『すばらしき世界』はやくざの出所後の世界を描くが、『ヤクザと家族』はあるやくざのこの20年の生き方を3つの時期に分けて見せる。
2001年9月のベネチア映画祭についてはまだ書くことがあった。まずその年のベネチアには、コンペと別の若手・前衛部門(最近だと「オリゾンティ」だが、その年は「現在の映画」だった)の審査委員長として蓮實重彦さんが来ていた。
またまた韓国の監督の第一回長編の秀作を見た。チェ・ユンテ監督の『野球少女』で、天才野球少女として脚光を浴びたチェ・スイン(イ・ジュヨン)の高校卒業間際の日々を描いた作品だ。終盤で素直に泣けたのに我ながら驚いた。
2001年のイタリア年では今も続く「イタリア映画祭」を始めたが、その年だけ今の国立映画アーカイヴで「イタリア映画大回顧」を企画した。55本の古今のイタリア映画を上映したが、朝日新聞で「特集」記事を書いてもらうために文化部の記者を派遣することになった。
昔はさほど気にならなかったが、年のせいか暑すぎたり寒すぎたりすると、居心地の悪い思いをするようになった。いつも行き当たりばったりで朝起きて服を選んでいたが、それだと時々失敗する。例えば地下鉄の中でタートルネックセーターに汗をかくのは最低だ。
3月26日公開の池田暁監督『きまぐれ楽隊のぼんやり戦争』を試写で見て邦画で久しぶりに驚いた。普通私は試写の時はノートを持って気になったシーンや言葉をメモする。この映画でも構えていたが、「なんだこれは」と思っているうちにいつの間にか終わってしまった。
アーティゾン美術館にまた行った。この美術館は15年頃前に改装されたニューヨーク近代美術館に近い感じで、都会のビル街にありながら中に入ると広い空間に溢れ、実に気持ちのいい空間だ。今回は「STEPS AHEAD 新収蔵作品展示」という題で、所蔵品のみの展覧会が3つのフロアーすべてを使って開催中だ。
フランス映画には確実に「映画通にしかおもしろくない映画」が存在する。1970年代以降のゴダールの映画はそうだし、クロード・シャブロルもジャック・リヴェットもそんな映画をたくさん作っている。1950年代半ばに批評家時代のフランソワ・トリュフォーは、当時の保守的なフランス映画を「フランス映画のある種の傾向」という文章で徹底的に批判した。
「手癖が悪い」というと、普通は物を盗む人やすぐに異性に手を出す人を想起する。「足癖」という言葉はあまり使わないが、先日またマンションの1階下の玄関扉を開けてしまった。足が自然に向かうのは「足癖」ではないだろうか。
岨手由貴子監督の『あのこは貴族』を劇場で見た。新聞各紙の夕刊評でも大きく取り上げられていたし、予告編も気になったので期待して見に行った。期待通りなかなかおもしろかったが、見ながらどこかさめてもいた。
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