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2021年3月31日 (水)

『狼をさがして』を見て

「東アジア半日武装戦線」という言葉はよく覚えている。1974年に三菱重工爆破事件などを起こしたグループで、現場で血だらけになった会社員たちの写真と共に中学生の時に強く印象に残った。韓国の女性監督、キム・ミレがそのドキュメンタリーを作ったと聞いて、劇場に見に行った。

74年から75年にかけての一連の企業爆破事件は、72年の連合赤軍によるあさま山荘事件とは当時からちょっと違って見えた。あさま山荘にはそこに至る山岳ベースでの内輪のリンチ殺人があったから、弁解の余地はない。それは学内の中核派や革マル派などの内ゲバ事件とも結びついた。

「東アジア反日解放戦線」の敵は日本の大企業で、三菱重工、三井物産、帝人、大成建設などが狙われた。経済侵略で東アジアの国々を搾取する日本の大企業への批判は当時も少しだけ理解できた。しかし中学生の私は、それが第二次世界大戦中に日本が韓国、台湾、中国などのアジアの国へ侵略したことまで含んでいたことは知らなかった。

だからこの映画を旧植民地の韓国の監督が撮ったのは意味がある。ましてや今は韓国の大企業もアジアの国々を搾取していると考えるとなおさらである。この映画を見て知ったのは、この「戦線」の考えに沖縄やアイヌを支配した日本への批判もあったことだ。三菱重工事件の「狼」のリーダー、大道寺将司は北海道の釧路の生まれで自分をアイヌの侵略者の子孫と捉えていた。

もともと監督がこの事件を知ったのは大阪の釜ヶ崎を取材していた時だった。大道寺もかつてそこで1年を過ごしたことがあったし、韓国に4回も行っていた。

映画を見ていて「あっ」と声を挙げそうになったのは、「さそり」の宇賀神寿一が出てきた時。彼はいまだ逃走中の桐島聡と共に大きな顔写真入りの「指名手配」ポスターがあちこちに貼られていた。桐島の写真は最近まであった気がする。その後宇賀神が捕まったのは覚えているが、もう釈放されていたとは。

実は宇賀神もそうだが、この映画では男性は印象に残らない。大道寺は出てこないで死んでしまう。とにかく女性たちが力強い。まず三菱重工事件で「協力者」として11年投獄された荒井まり子は母と元気に暮らす。母は「事件のおかげで仲間が増えた」と笑う。

大道寺の支援者で彼と面会するために法律上の妹となった大道寺ちはるも実に明るく話す。「大地の牙」の浴田由起子が20年の刑を終えて出獄するシーンは感動的だ。支援者たちと抱き合って喜ぶ。

この映画はなぜ彼らがこのような事件を起こしたのか、死者8名、負傷者多数をどう思うのか、問題の核心には迫らない。ただ彼らのどこかに「正義」があったことを示す。何度も写る釧路や小菅拘置所の殺風景な様子が妙に心に残った。

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