『シカゴ7裁判』に血沸き肉躍る
アーロン・ソーキンの脚本・監督『シカゴ7裁判』を劇場で見た。昨年10月からネットフィリックスでやっていたが、だいぶ前から解約していた。最近発表されたアカデミー賞のノミネートに多数並んでいたので急に見たくなり、劇場を探して下高井戸まで行った。
『Mank(マンク)』もそうだったが、これは劇場で見て正解。あの裁判劇や警察とデモ隊の激突は大きな画面で見ると本当にドキドキする。ネット情報によればパラマウントの配給で劇場公開予定だったが、コロナ禍のためにネットフィリックスに全権利が売られたという。
1968年8月、シカゴの民主党大会に合わせて、全米から反ベトナム戦争の若者達がデモに集まる。それから数か月後、共和党のニクソン政権となりデモを主導した若者7人が逮捕されて裁判が始まる。
その裁判の進展に合わせてフラッシュバックのようにデモの場面が出てくる。いくつかの衝撃的なシーンがある。1つはなぜか7人と同時に裁判を受けるブラックパンサーのボビーが、裁判中に許可のない発言をして手足に手錠を掛けられて猿ぐつわで縛られるシーン。これはあまりにひどいので傍聴人も反発し、彼はこの裁判から外される。
もう一つはデモのシーンだろう。警察は催涙弾を向け、慌てる若者たちを次々にこん棒で殴る。そこに当時の白黒のニュース映像が混じるが、何度も警察の暴力に息を呑む。この当時はアメリカもこうだったのだと、改めて驚く。
若者たちを何とか守ろうとするクンスラー弁護士(マーク・ライアンス)のたたずまいがいい。最後まであきらめず、前司法長官(マイケル・キートン)まで法廷で証言させる。その証言で思わず泣きそうになった。ホフマン検事(フランク・ランジェラ)はその証言を陪審員に聞かせなかったり、被告や被告側の弁護士を侮辱罪で訴えたりして非道の限りを尽くす。最後に弁護士は怒って分厚い本(六法全書?)を叩きつける。
7人はそれぞれ雰囲気が違う。トム(エディ・レッドメイン)はジャケットを着ておとなしいインテリタイプだが、アビー(サシャ・バロン・コーエン)は饒舌な活動家タイプ。後半、この2人の役割が変わってゆくところもおもしろい。国側のシュルツ弁護士(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)はどこか被告たちに同情的だったりと一筋縄ではいかない。
基本は史実に基づいているから劇的ではないはずなのに、いくつもの場面の迫力と俳優たちの魅力によって最後の最後まで画面に引き付けられた。トムの最終弁論では本当に泣いてしまった。
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