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2021年3月23日 (火)

『まともじゃないのは君も一緒』の失速感

監督・前田弘二、脚本・高田亮の『まともじゃないのは君も一緒』を劇場で見た。このコンビは『婚前特急』(2011年)が抜群のノリの傑作喜劇だったし、『わたしのハワイの歩きかた』(14)もそれなりによかった。

ところが実話ブログをもとにして監督が脚本を書いた『夫婦フーフー日記』(15)がいま一つだった。脚本が複雑すぎたし、悲劇と喜劇の混ぜ合わせ具合がどこか機能していなかった。今回は再び高田亮がオリジナル脚本なので期待していたが、そうでもなかった。

予備校講師の大野(成田凌)は数学が専門で、生徒の香住(清原香耶)にその世間離れした言動を馬鹿にされている。香住にこのままでは結婚もできないと言われて、彼女の恋愛指南を受ける。ここまでは数学バカを演じる成田凌が抜群におかしくてゲラゲラ笑う。

ところが香住が尊敬する評論家(小泉孝太郎)の恋人・里香との恋を邪魔するために、大野をけしかけて里香を口説かせるあたりから失速が始まる。評論家があまりに馬鹿すぎて里香の心が離れるのは当たり前に見えるし、大野は普通の本物の魅力を見せ始めるから。後半は大野の話すことがまとも過ぎて弾まない。

香住が大野のことを好きなのは最初からわかるので、終盤に告白を持ってきてもインパクトはいまひとつ。それぞれのシーンは丁寧に撮られているし、話もスムーズに進むので見ていてそれなりに楽しめはするけれど。

やはり『婚前特急』で5人の男性を手玉に取る吉高百合子のような破天荒な人物が欲しいし、もっと滅茶苦茶な編集で躍動感だけで成り立つような映画にして欲しかった。成田と清原のコンビならば、かなりおかしな方向にも行けたのでは。

『婚前特急』の時は、よく「スクリューボール・コメディ」と言われた。アメリカの30年代から40年代にかけて作られた男女のコメディで、主人公の弾丸のような台詞の応酬が特徴だ。「スクリューボール」は「変化球」→「変人」を指すので、変人喜劇とも言われる。『ある夜の出来事』や『ヒズガールフライデー』がその代表作。今回は成田と清原の「変人」ぶりが足らなかったのではないか。

 

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