『フィールズ・グッド・マン』がおもしろい
予告編で見て「これは何だ」と気になって『フィールズ・グッド・マン』を劇場で見た。アメリカのアーサー・ジョーンズ監督のドキュメンタリーで主人公は「カエルのペペ」の漫画を描くマット・フューリーだが、むしろペペそのものかもしれない。
「カエルのペペ」はどこかで見た気がするが、意識したことはなかった。2005年にマット・フューリーが自分と仲間たちのだらしないが楽しい生活を動物にして描いた漫画で、ペペは緑の顔に大きな目。お尻を出しておしっこをする姿に「フィールズ・グッド・マン」=「気持ちいい男」とキャプションを付けて有名になった。
ところが巨大掲示板の「4chan」(どうも2チャンネルに近いものがアメリカにあるようだ)で取り上げられて、人気に火がつく。「負け犬」の男性の象徴となったり、ナチス礼賛に結びつけられたり。みんなが漫画に手を入れてどんどん過激な方向へ進む。
極めつけはトランプの「ドヤ顔」と結びつけられて、白人至上主義や排外主義の象徴となる。大統領選でもペペの帽子やマスクを被った人々が溢れる。最初はおもしろがっていたマットもこれには心を痛めて、「ペペを愛の象徴に戻したい」と人前に出て運動をするが、時既に遅しでトランプは当選してしまう。
それからは、極右の格好のペペのTシャツや帽子を売って商売をするテレビ局などを訴えて訴訟という手段に出る。しかしいくら訴訟に勝っても勢いは止められない。マットは深く傷つくが、香港では民主化運動のシンボルとなっているのを知って喜ぶ。「人生は何が起こるかわからない」
この映画でおもしろいのは、掲示板に群がるオタクたちがなぜかトランプを支持し、極右に傾いてゆくこと。いわゆる「ネトウヨ」は国際的な現象なのだと思った。この映画を見ているとトランプを生んだのはネット文化ではないかと思う。ペペの悪用はその結果でしかないが、元を作った漫画家としては気が気ではないだろう。
掲示板に参加するオタクたちは普通の常識的な人々を「ノーミ―」と呼んで馬鹿にし、トランプの勝利を「ノーミ―に勝った」と喜ぶ。SNS、掲示板などのネット文化と政治の関係がこれほど強いことに驚いた。
映画はドキュメンタリーだが、随所にアニメを入れて全く飽きさせない。掲示板に投稿するオタクも、トランプのネット戦略を率いた人物も、ペペを変えて金儲けをする極右の運動家も、ペペのレアグッズを集める成金も出てくる。しかしなによりも自分が作ったキャラクターの変容に悩むマットの姿が強く印象に残る。見ていて気が気でなくなり、あっという間に時間が過ぎた。
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