大学教員を公募して
今年の4月から私の大学に新しい教員が加わった。先日ここに書いたように田島良一先生が3月末に定年で退職されたので、日本映画史が専門の志村三代子さんが着任した。「公募」による採用だが、ここに至るまではなかなか大変だった。
大学の教員に資格はないし、共通の試験もない。極端に言えば学内の同意さえ得られさえすれば、知り合いを教授にすることだってできる。しかし最近は「公共性」や「公平性」を考えてか「公募」にすることが多い。
しかし法律や経済や文学などの研究を主とした文系に比べると、芸術系はそう簡単にはいかない。一流の芸術家が教育に向いているとは限らないし、アーチストといえど大学のやり方を守ってもらう必要もあるし、雑務も多い。そんな訳かどうか知らないが、芸術系の私の大学は公募が少なかった。
私自身、突然ある方の仲介で今の大学の先生と会って採用された。ちなみに大学教員は今は博士号取得者が標準だが、私は博士はおろか修士課程の中退である。それまでの仕事や研究の実績を評価してもらい、なんとか「博士に相当する」としてもらった。かなり無理があったはず。
そんな私だからまた「博士に相当する」人を自分で見つけても良かったが、自分はどうしても「研究」が弱いので学生のためには「本物の学者」を連れてくる必要を感じていた。どんな人が優秀かはある程度目星がついたが、最近は博士論文を本にする知らない若手がどんどん出ている状況を考えると、やはり「公募」にしたいと思った。
さて4月から1名採用できると決まったのが去年の6月頃か。「公募」を主張したが学科内では「揉めていると思われる」と否定的な意見もあった。押し切ると事務局からは「どうぞ自由にやってください」。公募でもそうでなくても学科で選んだ先生を教授会にかければよいとのことで、逆に言えば事務局は公募に一切タッチしない。
学科内でも誰も手伝ってくれなかった。私はほかの大学の「公募要項」をいくつか比べて自分なりに「要綱」を作ってみた。できるだけ応募者に無駄な負担がかからず応募しやすいように、実質的なものを考えた。履歴書の形式は自由、推薦状も研究業績の実物添付も必要としなかった。そして最後に「男女参画社会の実現のために女性の応募を歓迎します」と書いた。
実はこの最後が一番大事で、男女平等が世界120位の日本を少しでもよくするために私ができることは女性の採用だと前から思っていた。しかし男性が優秀なら男性を採用せざるを得ない。問い合わせ先は私のメールアドレスにした。関係学会のMLに流し、科学技術振興機構の研究者人材データベースJREC-INにも自分で登録した。
問い合わせの時点でお断りした知り合いを含めると20代から60代まで50名を超す応募があった。学科内で5人の選考委員会を作り、数名を面接して話し合いで1名を選んだ。研究業績から言えば適任者は10名ほどいたが、あらゆる観点を総合して満場一致で決めた。結果として女性が選ばれてよかったと思う。
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