黒沢清監督とベネチア
先日、イタリア文化会館で黒沢清監督とベネチア国際映画祭のディレクター、アルベルト・ベルベーラ氏のオンライン・トークを司会する機会があった。英語字幕付きの『スパイの妻』の上映前の1時間弱で「銀獅子賞受賞記念」だったが、これが意外におもしろかった。記憶をたどりつつ紹介したい。
ベルベーラ氏は黒沢映画の魅力として、アメリカのジャンル映画を思わせることを挙げた。フィルムノワールやホラーなどの複数のジャンルを横断していると言い、『スパイの妻』をヒッチコックに例えた。彼は「1951年の『羅生門』のグランプリはまるでUFOが着陸したくらいの衝撃を与え、それは翌年からの溝口健二の3年連続受賞に続いた。以来ベネチア国際映画祭と日本映画は相思相愛にある」
『スパイの妻』はこれまで現代を描いてきた黒沢監督が戦時下を描くという初めての時代もの企画だが、それが見事に成功していると述べた。彼の映画でほかに特に好きな作品として『トウキョウソナタ』を挙げた。
真面目なバルベーラ氏に比べると黒沢監督はユーモアたっぷりで、まず「ヒッチコックはほめ過ぎです」「審査委員長のケイト・ブランシェットから直接銀獅子賞をもらいたかった」と言って会場を笑わせた。それからベネチアと東京を繋いだオンラインを使った記者会見に触れて「便利だけど、終わると現実に戻るのでつまらない」「映画は一緒に見て、見た後に語り合うのが一番楽しい」
三大映画祭については「ベルリンは大都市で、一見するとどこで映画祭をやっているのかわからない。会場に行くと盛り上がるけど。カンヌは興奮と緊張の場。みんな見た映画の悪口を言うのを待ち構えていて、作り手としては落ち着かない。ベネチアはリド島という観光客から離れた場所で実に気持ちよく、すばらしい」とベネチアに気を使った。
私がフランスとの合作の『ダげレオタイプの女』を例に挙げてイタリアとの合作はあるかと聞くと黒沢監督は「ぜひ撮りたい。イタリアならホラー映画はどうだろうか」。バルベーラ氏も親指を立てて賛成し、「合作協定がないなど問題があるが、ぜひ進めたい」
また昨年奇跡的にリアル開催ができたベネチア国際映画祭の今年の見通しを聞くと「今の段階では何とも言えないが、昨年の経験をもとに実施の方向であらゆる方法を追求している」
18時から始まったが、19時までにバルベラ氏は家を出る必要があるとことで、私は途中から時計ばかり見ていた。18:45あたりで双方の最後の一言とし、終えたところで18:50過ぎ。とりあえず無事に終わった、と思う。
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