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2021年4月 2日 (金)

『ブックセラーズ』は愛おしい

よく「No Music, No Life」という言葉を見る。私はクラシックのCDはそれなりに買ったが、今の自分にとって音楽は不可欠のものではないからこの言葉は当てはまらない。4月23日公開のドキュメンタリー映画『ブックセラーズ』の試写状に「No Book, No Life」と書かれていたのを見て、「これだ」と思った。

私はどこに行くにも必ず本を持ってゆく。自宅近くに30分ほどランチに行く時はもちろん、地下鉄で2駅の東京国立近代美術館に行く時さえ本なしでは行けない。スマホはなくても本がないとダメである。なぜ、いつからこうなったのかわからないが、まさにNo Book, No Life。

『ブックセラーズ』に出てくるのは、私のような単なる本好きではない。仕事として本を売っている人々だ。それも古本でかつ単なる古本屋ではなく、稀覯本を扱うマニアックな連中だ。私自身は古本屋は好きで街を歩いて見つけると必ず立ち寄るが、稀覯本とは縁がない。いいなあと憧れるが、手が届かない世界。

ここに出てくるのはニューヨークでそんな本を扱うブックセラーたちだが、いわゆる普通の古本も売っている人が多い。30人くらいの人が出てきていろいろ話すので誰が誰だか覚えられないが、どの発言も味わい深い。記憶に残ったものを挙げてみる。

「同業者の男性はツイードのジャケットを着る人が多い」「あるフェアでバルザックの40巻本を見つけた時、これは私が買うわ、触らないでと叫んだわ」「インターネットは古本の世界を壊した」「1950年代にはニューヨークの古書街に48の書店があったが、今はストランド書店しかない」「この世界にはかつては白人男性しかいなかったが、今は女性も黒人もいる」

とにかく本について語る彼らがみな楽しそうだ。これを仕事にして幸せたっぷりな感じが伝わってくる。オークションやフェアもあるので、アートの世界に近いが、アートほど金額は高くないし、人々も気取っていない。ブックフェアは本当に和気あいあいとした感じだし、彼らが集まる食事も笑いが絶えない。

この映画を見ていると、ああこういう仕事をしたかったと思わず思ってしまう。すべての本好きを幸せにする愛おしいドキュメンタリーだ。監督はD・W・ヤングで何本かドキュメンタリー作品を手掛けている。プロデューサーの1人はブックセラーで出版社も経営しているというから納得。これは本好きにしか作れない映画だ。

 

 

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