『るろうに剣心』に『鬼滅の刃』を思う
2コマ連続の講義系授業でしゃべり尽くして疲れた頭で、なぜか『るろうに剣心 最終章The Final』を見に行った。この映画のプロデューサーの1人を授業に呼ぶというのが理由だったが、26日(月)の時点でまだ開いていた「グランドシネマサンシャイン池袋」に行ってみたい欲求にも駆られた。
今回の緊急事態宣言では、「酒なし外食令」に加えて「1000平米以上の商業施設自粛」という新たな項目が出てきた。当然シネコンはそれに当たるので25日(日)に閉じたが、ユーロスペース、イメージフォーラム、アップリンク渋谷、岩波ホールなどは狭いので上映を続けている。
ところがグランドシネマサンシャイン池袋は、12スクリーンを持つシネコンなのに営業を続けていた。物好きの私はその現場を見たいと思った。怖いもの見たさというか。ここはTOHOシネマズのような邦画大手でもイオンシネマのような大企業の経営でもない。あとでわかったが、翌日27(火)からはさすがに閉じていた。
『るろうに剣心 最終章』はたしか3つのスクリーンで上映していたが、私が見た100席強の小さなスクリーンはほぼ満杯。夕方だったせいか、ポップコーンを持った高校生男子のグループが目立った。全体には男性率が高く、カップルは少ない。私のような中年男性もポツポツ。
実を言うと、私は『るろうに剣心』は漫画もアニメも知らないし、映画も2012年の第一作を飛行機で寝ながら見ただけだ。その時には、茶髪の佐藤健が今風の言葉を話しながらチャンバラ時代劇をやるのがウケるのかなと思ったくらい。佐藤健演じる主人公の剣心が絶対に勝つというのが、時代劇や任侠映画と同じだと思った。
今度最新作を見ながら、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』のことを考えていた。『るろうに剣心』は明治初期、『鬼滅の刃』は大正時代で時代設定が近い。日本が近代化に向けてどんどん進んでいたある意味で楽天的な時代だ。そして『マッドマックス 怒りのデスロード』を思わせるほど、SFに近い登場人物が続々と出てくる。もちろんアニメの『鬼滅の刃』の方がもっと奇想天外だけど。
剣心は複雑な過去を抱えながらクールに生きていて、竈門炭治郎に近い。だから私のようにその過去をよく知らないとよく味わえない。そして残酷なアクションシーンとロマンチックで情緒過多な場面が交代で出てきて、見る者を物理的に揺り動かす。『るろうに剣心』はやたらに桜の花や雪や火の粉を散らして盛り上げていたが、私はそのたびに「またか」と思った。
興味深かったのは、敵として中国人が設定されていたこと。そのトップは日本人で上海に行った縁(新田真剣祐)だが、中国語を話して中国商人たちを率いて剣心に復讐を企てる。日本が前向き一直線の明治や大正時代に中国をも蹴散らして進むアクションと純愛の話は子供だましのようだし、その能天気な日本礼賛も気になって、138分は私には長すぎた。そういえば「朝日」も「読売」も絶賛していたが。
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