アマプラを探して
大学で映画史を教えているが、もちろん一番大事なのは学生が映画そのものを見ることだ。見るべき映画リストを渡してもなかなか見ないので、授業で大きなスクリーンで見せることも多い。授業は90分なので、可能な場合は2コマ続きにする。
デジタル復元されたブルーレイを大きなスクリーンのある教室で見せると、かつての並木座のような名画座よりずっといい状態で見ることができる。だから復元版が出ると端から買っていた。
しかし1年前から、対面での授業ができなくなった。昨秋はある程度できたが、今年の初めからはまたオンラインに戻った。実は4月には2週だけ一部の授業を対面にしたが、緊急事態宣言が出るとそれも難しい。
DVDやブルーレイを見せて解説する授業はどうしたかと言えば、アマゾンプライム(アマプラ)で選んで事前に見てもらうのが一番簡単。学生は月250円のうえ、半年は無料だから、映画館で1本見るより負担はずっと小さい。たぶんスマホで見ている学生もいると思うが、作品を指定して見てこいと言うと、おおむねみんな見てくる。
問題は見て欲しい作品がなかなかアマプラにないこと。授業だからテーマを決めて作品を指定するが、選ぶのが難しい。私は暇さえあれば、アマプラを検索している。それに一度そこにあったからと言って、いつまでもあるとは限らない。昨年、ジャン・ルノワールの『ゲームの規則』(1939)を選んだが、授業の1週間前に見ようとしたら、いつの間にか消えていた。考えてみたら、全体のリストも公開していない。
昨年、マルセル・カルネの『天井桟敷の人々』(1945、上下)をやったが、今年もやろうと見てみたらなぜか上のみ「このタイトルは現在ご利用いただけません」となっている。下は見られるのに意味不明だ。権利が切れたのならば上下とものはずだが。単なる操作ミスに違いない。
要するにアマプラは古い映画に関してはいい加減だ。製作年もよく間違っているし、監督名がなかったりデータもほとんど記載されていない。ネオレアリズモをテーマにしてヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』(1948)を選んだが、字幕版が英語吹き替え版だったので、やる気が失せた。もちろん当時のイタリア映画はアフレコとは言え、英語があまりに吹き替え調だった。
ロベルト・ロッセリーニの『イタリア旅行』(1954)は私が持っているDVDはイタリア語吹き替え版だが、アマプラは英語を主体としてイタリア語が混じるオリジナル版でイングリッド・バーグマンの声が聞こえる。要は何も考えずに選んでいるのだろうが、こちらはそれを毎日真剣に検索して選んでいる。
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コメント
アマプラ、特にパブリックドメイン作品に対しては酷くて、ワンコインDVDと同じ画質など素性のよくわからない最低なものをそのまま使っています。
「カサブランカ」などあまりにもひどいので申し訳なく、途中で視聴をやめてちゃんとしたブルーレイを買い直しました。
この辺は見識が問われますね。
投稿: Shinichiro Kimura | 2021年5月10日 (月) 18時45分