『デッドロック』に唸る
昔、Deadlockという題名のドイツの前衛的な西部劇があるという話は、ドイツ人の映画好きの友人から聞いたことがあった。1970年の映画だが、今頃になって日本で公開されているのを知って慌てて劇場に行った。
監督はローラント・クリックというが、聞いたこともない。しかし映画はかなりの美学で作られていて、見ていて飽きなかった。もちろん娯楽作品ではないが、いろいろなことを考えさせられる。
よれよれの背広を着て左腕を怪我した若者が、札束を詰めたジェラルミンケースを持って砂漠のような場所を歩いている。とうとう行き倒れると、壊れそうなおんぼろトラックで現れた髭の男が彼を拾って自分の家に連れてゆく。髭の男、ダム(マリオ・アドルフ)は若いキッド(マルクヴァルト・ヴォーム)を殺してお金を奪おうとするが、キッドの抵抗にあう。
そこにもう1人の黒ずくめの中年、サンシャイン(アンソニー・ドーソン)が列車に乗って現れる。冷酷なサンシャインはダムを殺してお金をキッドと分けようとするが、ダムは抵抗する。ダムの住む家は採掘場の元工場のようで、近くの建物には赤い服を着た太った娼婦がおり、その娘らしい口のきけない美少女はキッドを覗いている。
3人の男が互いを殺そうとするが、なぜかいつもうまくいかない。娼婦は大声で騒ぎ、美少女は煽情的なポーズを取る。終盤、とうとうサンシャインはダムを殺し、キッドと金を分ける。サンシャインは去るが、実はお金を抜き取られていたことに気づいて舞い戻る。怒りのあまりサンシャインは女2人も殺し、キッドも殺そうとするが逆に殺される。
最後の10分ほどを除くと、おおむね退屈だが、私には男3人の化かし合いや殺し合い、さらに煽情的な母娘の姿が、日本の全共闘後の内ゲバのように見えた。ドキュメンタリー映画『狼を探して』で描かれた三菱重工爆破事件がそうだが、日本、ドイツ、イタリアの敗戦国ではなぜか学生運動の終結後に内ゲバやテロが長い間続く。
ドイツのこの映画はそんな内紛のように見えた。結局アラブ人風のダム(実際はイタリアの俳優)、男に媚びることしか知らない母娘、そして中年男までも死んでしまい、若いブロンドの男のみが生き延びるというのも、1970年ドイツの世界観の限界だろう。
実際はイスラエルのネゲブ砂漠で撮影されたというが、車も列車も家もみんな見事なくらいボロボロで、殺風景このうえない。そんなところに追い詰められた希望のない人々の光景が妙に懐かしかった。
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