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2021年5月20日 (木)

シネマヴェーラの「Men & The Guns」:その(3)

ル・シネマでロメールを見ようと思い直前に予約を試みると満員だった。そこで予約の必要のないシネマヴェーラに行って「男と銃」特集でジョセフ・H・ルイスの『拳銃魔』(1950)を見た。この映画はフランスではカルト的な人気で、私は1984年にパリで見たはず。

それ以来見ていないので37年ぶりだが、覚えていたのは最初のシーンだけだった。激しい雨の中、少年が銃砲店のショウウィンドウの銃を見つめていて、どうしても欲しくなって大きな石を投げてガラスを割り、銃を奪う。走り出したところで転び、見上げると警官がいる。

それからはすべて忘却の彼方だった。裁判で少年バートは少年院行きとなる。その後軍隊に行って大人になったバート(ジョン・ドールズ)は故郷に帰って来る。幼馴染のデーヴとクラウドは新聞記者と保安官になっていたが、彼の帰還を喜んで一緒にお祭りに行く。

そこでバートは拳銃ショーの美女ローリー(ペギー・カミンズ)と知り合い、2人はすぐに意気投合する。バートは真面目な人生を送ろうと考えていたが、それまでも悪事を重ねてきたローリーに影響されて、銀行強盗を始める。しかし彼らの手法は銃で脅してお金を奪い取るもので、人を殺すことはなかった。

ここでおもしろいのは、バートがいかにもいい奴で強盗をするたびにこれでいいのかと悩むこと。少年院から始まって、まじめな素直な男が悪い運命に導かれて無理をして悪事を重ねている感じ。しかしその割には強盗の手並みは鮮やかだ。毎回2人は変装して現れ、お金を盗むと用意していた車に飛び乗って逃げる。その車からのショットが迫力満点。

彼らの悪事が新聞にも載り始め、FBIも捜査に乗り出す。バートはローリーにメキシコに逃げようと提案するが、ローリーはその前に最後の大勝負を提案し、バートは最終的に了承する。彼らは別々に肉加工工場に勤め、給料日にお金が届くところを盗む。ローリーは逃げる時に銃で自分の上司を撃ち、さらに警備員も殺す。

2人は別々に逃げる予定だったが、結局離れられないと一緒に逃げる。いったんは雲隠れに成功するが、使ったお金の番号から足が付き、行く場所がどこにもなくなる。2人は何とか列車に飛び乗って故郷に帰る。姉の家にいる彼らを説得に来たのはかつてのバートの友人たちだった。2人は深い霧の森の中に逃げ出すが警察犬が追う。沼の中を逃げる2人を追ってきた友人たちに銃を向けるローリーをバートは殺してしまう。

故郷で友人の前で愛する妻を殺すという何とも後味の悪い話で、運命が彼に暗い人生を歩ませたとしか思えない作り。この暗さはいささか精神病的な感じさえする。共同脚本のミラード・カウフマンはダルトン・トランボの偽名。87分、ユナイテッド・アーティスト製作。このDVDも買いたい。

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