学生の書く日本語について
学生には映画をめぐるさまざまな課題を出すが、年々不愉快になる言い回しが増えているような気がする。今一番嫌いなのは、学生が映画を「見る」ではなくて「視聴する」と書くこと。もちろんこれは前からあったが、去年から急に増えたのは配信の影響だろう。
そもそも授業を対面でできないから、2019年までは2コマを取ってまずは映画1本見せていたのを、配信かDVDで見ておくということになった。アマゾンプライムには基本的に会員になるよう指導していることもあり、こちらはそこにある作品から選ぶ。学生はパソコンや下手をするとスマホでみるから「視聴」というのが普通なのだろう。
一般的にはそれでいいけれど、映画の授業では「視聴する」は使ってほしくないと伝える。「では「鑑賞する」はどうですか?」という質問が来た。「間違いではないけど、個人的にはもったいぶった感じで好きではありません」と答えた。「「見る」ですか?「観る」ですか?」と聞かれたこともあった。「私は「見る」の方がシンプルで好きです」と答えた。
映画について論じるのに、最近の学生がよく使う言葉がある。「立ち位置」「スタンス」「ポジション」と書かれると苦手だ。「場所」「位置」「立場」の方がいい。「目線」も実に多いが、これは「視線」「見る方向」などの方が好ましい。そのほか「アイテム」「キャラ」「前フリ」「テンプレ」「サイド」なども使って欲しくない。
これらは一般の社会で普通に使っているのは知っているが、「古くさい」私はできたら使ってほしくない。それらはおおむねテレビ業界から来た言葉で、使うといかにも安っぽくなる(と私は思う)。
もちろん、それらは決して間違いでないし、個人のSNSなどではどんどん使ってかまわない。そもそも「間違った言葉はない」というのが、私がパリの留学生時代に言語学の授業で習ったことだった。その女性教授は言った。言葉は誰かが話したとたん、書いたとたんに「実例」となる。言葉はどんどん変わっていくから、間違いといいうのはおかしい。年齢や環境によって、好き嫌いはあるだろうが。
私は「古くさい」文章の書き方を教えているのだろうが、学生には「就活でも、働いてからもその方が役に立つから」「世の中の大人は保守的だから」と説得している。さて本当のところはどうだろうか。大学の世界が、あるいは私個人が保守的なだけかもしれない。
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