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2021年6月30日 (水)

『トゥルーノース』は直球勝負

アニメの『トゥルーノース』は試写状をもらった時から不穏な感じがしていたが、私の学生が「すごいですよ」と言ったので劇場で見た。監督・脚本・プロデュースは清水ハン栄治で、在日4世で初監督作品という。見てみると、予想とは違って直球勝負で自分の主張をぶつけるタイプの映画だった。

その主張とは、北朝鮮には強制収容所があって12万人が収容されて苦しんでいるというもの。映画のほとんどはその収容所での苦しい生活を見せるが、いくつか仕掛けがある。

一つはTED(=アメリカ式プレゼン大会というべきか)でアジアの青年が講演をしているところから始まって、北朝鮮の強制収容所を語り、終わりにそこに戻る構造を取っていること。実はその青年は、というサプライズもある。

主人公のヨハンはかつて在日コリアンでいわゆる「帰国事業」で両親や妹と北朝鮮に渡ったという過去がある。冒頭は彼らの平壌での暮らしが描かれるが、日本生まれの彼らは常に監視されていて、ある時父が逮捕され、ヨハンと母と妹は収容所に送られる。日本のエピソードはないし、収容所でも日本のことは語られないが、在日だった老女にヨハンの妹のミヒが「赤とんぼ」を歌うシーンが強い印象を残す。

そもそも主人公たちの造形が、木に彫った人形のように素朴なのも、えんえんと続く地獄の描写を和らげる。鬼のような収容所長もヘタウマのようなアニメ顔でどこかユーモアがあるので、落ち着いて見ることができる。炭鉱のシーンは壮絶だし、完全統制施設での拷問は凄まじい。アニメでなければとても見ていられない。

終盤、集会でのヨハンの告発をきっかけに反乱が起こり始める。そしてTEDに戻る。それからクレジットが始まるとその収容所の航空写真や地図がこれでもかと写り、このアニメが実は事実であることを主張する。まさにそのために作られた映画だが、素手で描いたようなアニメの優しい感触が悪くない。

監督は、収容所にいた脱北者や元看守などにインタビューを重ねたという。ヤン・ヨンヒ監督『かぞくのくに』は兄が北朝鮮に「帰国」して治療のために一時的に日本に帰ってきた家族を描いたが、この映画では想像するしかない北朝鮮の実情が描かれている。東映ビデオの配給ゆえにシネコンでも上映されているが、今後長く話題になる作品ではないか。

 

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