フランスがなくなった夢
朝方、不思議な夢を見た。「フランスがなくなった」と誰かが言った。「なくなった」という意味がよくわからないが、私が一番に考えたのはフランスに住む日本人やフランス人の友人たちのことではなく、なんと「ワインがなくなる」というものだった。
私は週に2、3回は夜にワインを飲む。別にフランスを特別視しているわけではないが、千円前後でまともなワインを探すとだいたいフランス産になる。そうでなければスペイン産。イタリアもアメリカもチリもいいワインはあるが、この値段だとどこか「作った味」がする。
だから飲むワインの8割はフランス産。これが飲めなくなると困る、とすぐに思った。しかし日本酒も焼酎も好きなのでどうにかなるかと考え直した。最近は紹興酒も種類によってずいぶん味が違うことがわかってきたし、ネップモイというベトナムのもち米を使った焼酎も好きになった。
そんな酒の心配をしていたら、「いや、なくなったのはフランスではなく、フランス語だ」と来た。その時思ったのは「ざまあみろ」だった。私は大学に入る前から独学でラジオ講座でフランス語を勉強し、大学ではフランス文学を専攻してパリに1年留学した。その後仕事でもフランス語を使ってきた。
それでも、フランス語は話すのも読むのも苦労する。最近もまた本当にヘタだと痛感したのは、パリ日本文化会館の企画でフランス語で日本映画について話したのをユーチューブで見た時。文字通り、穴があったら入りたい気分だった。
英語はもっとできないが、アメリカやイギリスに行ってもあまり恥ずかしくない。私より訛りの強い英語を話す人が町中にたくさんいるからかも。ところがフランスにいる外国人はアフリカ系もアラブ系もみんな完璧にフランス語を話す。1984年に留学した時から今に至るまで、フランス語を話すと劣等感のようなものがもたげてくる。
これからはフランス人も英語を話すのかと考えるとおかしかった。フランス人の英語は日本人と同じくらいダメだ。これは大変なことになるぞ、と考えていたら目が覚めた。いったいあれは何だったのだろうか。やはりフランスとフランス語に対するコンプレックスがいつもどこかにあって、急に出てきたのだろうか。
考えてみたら、私の場合イタリア語は英語よりできないが、イタリアでイタリア語を話すのは楽しい。みんな「イタリア語、お上手ですね」「どこでイタリア語を勉強したのですか」と褒めてくれる。それはフランスではまずない。あの国ではフランスにいる以上フランス語を話すのは当たり前なのだと思い至った。
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