『アメリカン・ユートピア』を楽しむ
またシネコンに行ってしまった。『アメリカン・ユートピア』の予告編はデイヴィッド・バーンが歌うシーンが何ともいい感じだったので、これは音のいいシネコンで見たいと思った。実を言うと、私は特に彼のファンではない。
大学生の時に「トーキング・ヘッズ」に夢中の友人はいたけれど、私はほとんど聞いていない。映画になった『ストップ・メイキング・センス』さえも見ていないのだから、話にならない。それでも彼の名前はあちこちで妙に気になっていた。
そんな私が見ても、『アメリカン・ユートピア』は楽しかった。デイヴィッド・バーンは今年69歳で白髪交じりだが、楽しそうに歌い、ギターを弾いて話しながら、舞台を軽やかに駆け回る。一緒に歌って演奏する11人の仲間もそうだが、裸足でみんなグレーのスーツを着ており、楽器を首からぶら下げている。
それぞれが打楽器や鍵盤楽器も体にぶら下げて、ワイヤレスピンマイクで歌いながら、舞台を駆け巡る。爽快なまでに自由な感じだけれどそこに統率感があり、12人の動きや照明に絶えずメリハリがついていて、見ていて本当に飽きない。
それ以上に、デイヴィッド・バーンの話や歌詞がいい。冒頭で脳ミソの模型を手に、人間の腦はどんどん衰えてゆくが、他人とのつながりでどうにか生きていけると言う。2016年の大統領選の投票率が55%なのも、地方選が20%なのはひどいというような政治的な話もあるが、ほとんどは哲学的なモノローグ。
歌詞もかなり抽象的だけど、どこか人間存在の根底に触れてくる。特に声がいいわけではないのだが、まっすぐ前を向いてしゃがれた声でしっかりと歌う姿に惚れ惚れする。彼自身が英国出身だし、ほかにもカナダ、ブラジル、コロンビア、フランスなどの出身であることをあえて言うのも主張だろう。年齢も肌の色も性別もバラバラだが、その集合体が絶妙のアンサンブルとなっている。最後のアカペラで12人が歌うとジーンと来た。
その後、全員が歌いながら客席を一周した。そして楽屋のシーンの後に、何とデイヴィッド・バーンが楽屋口から自転車で出てきて、ニューヨークの街を去ってゆく。いやあ、カッコいい。公演はブロードウェイのハドソン・シアターだったが、観客は終わっても興奮して帰らない様子だった。
真上からのカメラも含めて舞台をあらゆる角度から撮影して、音楽に合わせてリズミカルに編集しているのは、さすがスパイク・リー監督。これはシネコンで見てよかった。
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コメント
元々はライブ公演用のコンサート企画
↓
NYブロードウェイ進出! (リンク)
↓
に続いての映画化 でしたが、いじりすぎない
スパイク・リー の演出に好感が持てました。
最後の最後の演出、カッコよかったですね!
投稿: onscreen | 2021年6月12日 (土) 08時13分