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2021年6月11日 (金)

不思議な篠山紀信展

東京都写真美術館で始まったばかりの「新・晴れた日」を見た。2フロアーで彼の60年間の作品を見せるというので、興味を持った。これが実に不思議な展覧会だった。2012年にオペラシティアートギャラリーで見た展覧会は、有名人の写真をひたすら大きく拡大して見せていて、「どうだ」と言わんばかりだった。

ところが今回のさらに大きな個展は、まず写真が小さい。そのうえに、ぽつんぽつんと空間を取って並べている。4階が63点、仕切り壁のない3階は45点。もし詰め込もうと思ったら2,3倍は見せられただろう。そのうえにキャプションも説明が少ないから、ちょっと見ただけでは何の写真かわからない。

最初は、これじゃあわからないなと思ったが、会場で配られていた24頁の小冊子を見ると、急に興味が出てきた。例えばキャプションで「晴れた日」として番号だけの写真が30枚ほどある。よく見ると「ハマコー」こと浜田幸一や石原慎太郎らの政治家が写っている。小冊子を読むと石原のよびかけで集まった「青嵐会」の静岡での講演会だとわかる。

ハマコーの横にいるのは「ミッチー」こと渡辺美智男で、慎太郎の横で目をつむっているのは中川一郎だとは小冊子でわかった。オノ・ヨーコの寂しそうな写真もあった。小冊子ではこれが彼女の住むダコタ・ハウスで撮られたもので、これを気に入ったヨーコは有名な「ダブル・ファンタジー」のジャケット写真を篠山に頼んだという。

ポイントは、オペラシティで大きく展示してチラシ表紙にも使っていたジョン・レノンとヨーコのキスをする写真はどこにもないこと。あの写真を思い浮かべながら、そのきっかけとなった茫漠とした表情のヨーコの写真を見る。よく見ると、解説は篠山本人が書いたものだった。

同じコーナーには青島幸男と横山ノックの写真があった。小冊子では「タレント議員」で、もう一つの写真は糸山英太郎だった。ニクソンがテレビに出ている写真はウォーターゲート事件で辞任会見をしている様子で、野球選手が下を向いている写真は引退する長嶋茂雄だった。

「晴れた日」は1974年5月から篠山が『アサヒグラフ』で半年間連載した写真を写真集にしたものというが、1974年の日本がどんどん蘇る。当時中学生だった私はすべて記憶にあった。この展覧会は、そんな感じで1960年代から最近までを数少ない写真で見せる。しかし小冊子を読めば、私が生きてきた時代の諸相が蘇ってくる。

実は一番ショックを受けたのは1972年から81年の『明星』の表紙写真で、ずうとるび4人に岡田奈々がはさまっていたり、フィンガー5と桜田淳子が一緒に写っていたり、西城秀樹をキャンディーズの3人が囲んでいたり、いやはや異様だった。

ミニマルな展示で時代を浮かび上がらせた今回の展覧会はオペラシティの展示とは対極にあるが、私にはずっとおもしろかった。8月15日まで。

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