『ケーキの切れない非行少年たち』を読む
宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』を読んだ。私が昨年5月に『美術展の不都合な真実』を出した新潮新書で、ちょうどその1年前くらいに出てヒットを飛ばしていた本だ。最初はその題名がキャッチ―なので、ちょっとうさん臭い感じがしていた。
ところがある時、この筆者は精神科医で少年院にも勤めた人だと読んだ。そこで気になっていたが、最近買ってみた。28刷で表紙には「60万部突破!」と書かれている。私の本は3刷でも喜んでいたのだが。
筆者は医療少年院に6年、女子少年院に1年勤めたという。医療少年院とは「発達障害、知的障害をもった非行少年が収容される」場所で、そこで筆者が驚いたのは、「ケーキを等分に切れない」少年が多かったことだという。
「簡単な足し算ができない/漢字が読めない/簡単な図形を写せない/短い文章すら復唱できない」少年が大勢いた。「見る力、聞く力、見えないものを想像する力がとても弱く、そのせいで勉強が苦手というだけでなく、話を聞き間違えたり、周りの状況が読めなくて対人関係で失敗したり、イジメにあったりしていたのです。そしてそれが非行の原因になっていることを知ったのです」
この本の主張はほぼこれに尽きている。そして彼らが非行へと向かわないようにするポイントは「軽度知的障害」への対応のようだ。現在は「知的障害者」の定義はIQ70未満で人口の2%だが、かつてはIQ85%未満を指していた。それだと14%になる。軽度知的障害者は「普段生活をしている限りではほとんど健常の人たちと区別がつかない」
彼らは「日常生活では社会から「厄介な人たち」と攻撃されたり、搾取されたりと、さまざまな困難に直面してしまいがちです。そのため場合によっては意図せずとも反社会的な行動に巻き込まれてしまう可能性もあるのです」
さらにIQ自体が「絵を写すなどの再現力や描写力を測るような検査もなければ、答えのない問題に取り組ませて思考の柔軟性をみたりするような検査もありません」。だから平均のIQ100前後でも問題がある子供は多い。「「知的には問題がない」と判定されてしまえば、それは”怠けているだけだ””性格の問題だ””育て方が悪いのでは”と捉えられてしまうのです」
ではどうすればいいのかも書かれているが、一言で言えば教育に関わる人の数を増やすしかない。そうすれば「非行少年」の多くが犯罪を犯さずに普通の納税をする大人になるので、最終的には損はしない、というもの。それはそうだが、これはなかなか大変だ。
とりあえず「非行少年」が多くの場合、知的あるいは社会的障害から生まれていることを認識することはこの本で十分学んだ。
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