« 『オキナワ サントス』の意味 | トップページ | 留学生と見る日本映画:その(2) »

2021年7月11日 (日)

「ファッション イン ジャパン」展を楽しむ

9月6日まで国立新美術館で開催の「ファッション イン ジャパン1945-2020 流行と社会」展がおもしろかった。なぜなら、日本人が作ってきた服装の流れを見ることで、自分が生きてきた60年間を感じることができたから。まさに「流行と社会」がそこにあった。

最初にびっくりしたのは『TAKE IVY』という写真集を見た時。私は高校は男子校に通ったが、なぜかその頃「アイビー・ファッション」に夢中だった。『MEN'S CLUB』という雑誌はいつも本屋で見て、何号かは買って持っていた。そしてアメリカのアイビー・リーグのファッションを集めたこの写真集まで買った。

そこに展示してある「ヴァン」や「ケント」の服を見たが、ずいぶんダサい。今から考えるとアイビー・ファッションなんて、アメリカの金持ち大学生の無造作な定番服でしかないのだが、当時は輝いて見えた。

残念ながらこの展覧会には男性のファッションは多くない。プロローグとして1920年代以降のモガから戦時中のもんぺや国民服まで出てくるが、女性のものばかり。そういえば、この展覧会には軍服も制服も全く出てこない。

制服はファッションではないのかもしれないが、「流行と社会」ならばあってもいい。そんな風に「なぜこれがないのか」と言いながら見て歩くのも楽しい。とにかく物凄い量の展示だ。展示リストを数えたら、雑誌や写真などの資料を含めると858点。「女性ファッションを中心にする」といった枠をはめないと絞れないだろう。

映画関連で言うと、『狂った果実』(56)で石原裕次郎が着ていたアロハシャツが日活から借用されていたのにびっくり。森英恵のデザインでほかにも彼女が手がけた『夜霧よ今夜も有難う』(67)のジャケットとドレスなどもあった。『君の名は』(53)の真知子巻きは、スチール写真とそれを真似た女性を撮った朝日新聞の写真。

本格的に「ファッション」といった感じになるのは1970年代でコシノジュンコや松田光弘、山本寛斎、イッセイ・ミヤケなどが出てきてから。残念なのは高田賢三の衣装がなかったこと。KENZOブランドをルイ・ヴィトンのグループに売ったからなのかわからないが、これは欲しかった。

イッセイ・ミヤケは数カ所に映像のみの展示でこれも物足りない。たぶん同じ美術館で既に大きな個展をやったので、本人が「もういいです」と言ったのかもしれない。川久保玲は83年のものが2点あったが、やはり今見てもカッコいい。彼女の90年代のものもよかった。

ほかは90年代以降になると、私にはよくわからない。ユニクロがフリースやリサイクルも含めて3カ所に展示してあったのに、無印がゼロだったのはおかしいと思った。今はユニクロに太刀打ちできないけれど、かつて明らかに無印は「文化革命」だったのだが。

これだけ文句を言いたくなるという点でも、興味深い展覧会だった。

|

« 『オキナワ サントス』の意味 | トップページ | 留学生と見る日本映画:その(2) »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『オキナワ サントス』の意味 | トップページ | 留学生と見る日本映画:その(2) »