『真説 日本左翼史』を読む:その(1)
池上彰と佐藤優の対談を本にした『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』を読んだ。出たばかりの新書だが、本屋で見つけて読みたくなった。「左翼」というのは、私が長年生きる上での大事な指針だったから。
なぜ「左翼」なのか、わからない。九州の田舎町で育ち、父親は野球の巨人軍と相撲の大鵬と自民党が好きだった。そんな環境で育ったのに、いつの間にか「左翼」好きになった。一つは高校生の時から読み始めた加藤周一や大江健三郎などの文学者の影響だろう。
その前も、小学生の頃から「全学連」のデモをテレビで見るのが好きだったこともある。「ぜんがくれん!」と叫びながら大きな棒を横一列に持って練り歩く姿が気になった。その後の「よど号事件」や「あさま山荘事件」はテレビにかじりついて見ていた。
ところが働き始めたらソ連は崩壊してドイツは統一し、社会主義の夢は消えて社会党はどんどん小さくなっていった。中国共産党は暴走を始めている。私の中の「左翼」は、自民党嫌いくらいしか残っていないかも。もともと「左翼」とは何だったのだろうか。社会主義とは、共産党とは、社会党とは、新左翼とは。
そんな疑問に答えてくれるかと思った。本を手にしてまずおもしろいと思ったのは、佐藤優氏の「おわりに」。彼は「コロナ禍後、格差が拡大する」とする。その時に「日本ではほぼ死語になっている社会主義という言葉が、ヨーロッパのみならず伝統的に社会主義に対する抵抗感の強い米国においても、最近、頻繁に用いられるようになっている。日本でも近未来に社会主義の価値が、肯定的文脈で見直されるようになると思う」
確かに最近読んだ斎藤幸平『人新世の「資本論」』はそれを感じさせる本だった。対談の冒頭ではトマ・ピケティの『21世紀の資本』と共に、この本にも触れられている。佐藤「格差の是正、貧困の解消といった問題は、左翼が掲げてきた論点そのものです」
「現在一般的に流布している「平和」を重視する人々という左翼観は本来的に左翼と関係ありません」「伝統的な左翼は基本的に人民の武装化を指示するものです」
池上「同じ革命でも暴力に訴えずに平和的な手段で実現するのだという社会党のこだわりは、長く悲惨な戦争に疲れ切っていた戦後左翼の多数派の心情にぴたりと合致したのでしょう」
今日はここまで。
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