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2021年7月 4日 (日)

『パンケーキを毒見する』の意味

7月30日公開のドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』をオンライン試写で見た。プロデューサーは『新聞記者』や『iー新聞記者ドキュメントー』で話題を呼び、最近は『宮本から君へ』で製作助成金を取り消した日本芸術文化振興会に勝訴した河村光庸さんだ。

『新聞記者』は安倍政権に立ち向かう記者が主人公のドラマで、『i』はその元となった本を書いた東京新聞・望月記者を撮ったドキュメンタリー。今回は題名からわかる通り、菅首相本人を追ったドキュメンタリーだ。

監督はテレビマンユニオンの内山雄人なので、森達也監督の『i』のような独特のスタイルを持つ作りではない。あくまでテレビのドキュメンタリー番組のようにスムーズに見やすく作られている。古舘寛治による滑らかな(でも皮肉たっぷりの)ナレーションがあり、何度かアニメーションも使ってわかりやすく説明する。

冒頭に多くの政治家や関係者から取材拒否にあったことが語られる。その名前を出せばいいのに、と思う。取材に答えたのは、自民党議員の石破茂と村上誠一郎、立憲民主党の江田憲司議員、共産党の小池晃議員、前川喜平・元文部科学次官、元経済産業省の古賀茂明氏、ノンフィクションライターの森功氏、朝日新聞の鮫島浩・元政治部記者など。

一番おもしろかったのは、自民党現職議員の石破氏や村上氏が菅首相批判をするところ。特に石破氏は「この世界に35年いて、初めての言論空間。Aと言えばBと答える。かみ合っていいない」と言い、菅首相の答弁をこき下ろす。村上氏は「今までの総理大臣には、上に立つものとしての見識があったが、菅さんにはない」

冒頭で菅首相の答弁を女性の大学教授(名前を失念)が笑いながら分析する場面がある。立憲民主党の辻元清美議員や蓮舫議員の質問に対する答えだが、改めてじっくり見ると確かにふざけているとしか思えない。こんなことが国会で許されるなんて。

そして古賀茂明氏が出て、自分がテレ朝の「報道ステーション」のコメンテーターから外された経緯を語る。しかし「報道ステーション」の映像は出ないから、テレ朝が拒否したのだろう。そのことを言えばよかったのにと思う。

終盤は「それでも選挙に勝つ」ことの不思議をみんなが語り、大学生たちの声も出てくる。なぜ今の菅政権を選挙で勝たせるのか、これが見た者に課せられた課題だろう。この映画を衆院選前の7月末に公開するなんて、アメリカのマイケル・ムーア監督みたいですばらしい。それにしても、現実の政治や社会や経済をターゲットにする映画がまだまだ日本には少なすぎる。そういえば、今日は都議選だった。

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