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2021年8月23日 (月)

『孤狼の血 LEVEL2』の醍醐味

白石和彌監督『孤狼の血 LEVEL2』を劇場で見たが、久しぶりに映画の醍醐味を味わった。見終わった後に映画の主人公が自分に乗り移った感じは、最近味わっていなかった。地下鉄でグズグズしているカップルに「おんどりゃー」と言いたくなった。最近の日本映画で泣けるものは多いけれど、本当に怖かった、ドキドキしたという単純な感覚は珍しい。

前作は何でもありのベテラン刑事、役所広司が魅力の中心にあった。彼の演技がうまいのは当たり前なので、どんなにエログロをこれでもかとぶつけた演出でも、どこかに既視感があった。今回はとにかく刑務所から出所したばかりのヤクザ、上林を演じる鈴木亮平が凄まじい。こんな怖い俳優だったかと見ながら何度も驚く。

それに立ち向かうのが役所広司の子分役を演じていた松坂桃李だが、これまた予想外の強さを見せる。松坂演じる日岡刑事は、尾谷組に敵対する五十子会の会長を殺させて、手打ちを図っていた。刑務所から出てきた上林はそのやり方が気に入らず、すべてをぶち壊しにかかる。日岡は上林の子分に恋人の弟(村上虹郎)をスパイとして送り込む。

日岡の敵は上林だけではなかった。広島県警の上層部、とりわけ管理官の嵯峨(滝藤賢一)は日岡の手法を嫌い、あえて上林を自由に動かす。日岡と組んで捜査に当たる定年間際の刑事・瀬島(中村梅雀)の動きもどこか怪しい。日岡と五十子会の関係を追いかける新聞記者(中村獅童)も追い回す。

つまり上林は八方塞がりだが、わずかな隙間を探して走り回り、県警上層部と上林一派の両方に立ち向かう。こんなことができる俳優だったかと見ながら何度もびっくり。そして上林一派の五十子会への突撃をスパイから聞いて捜査員を集めて現場に向かうあたりからは本当にドキドキした。それから終盤のアクションまで、息もつけなかった。

平成初めの能天気な雰囲気とまだまだあちこちに残っていたヤクザの闇を組み合わせた表現もうまい。出てくる主要な俳優たちの動きがじんじんと響くし、五十子会の殺された会長の妻にかたせ梨乃を、ベテラン刑事瀬島の妻に宮崎美子を配するあたりもお見事。

あえて言えば、松坂桃李が少し若すぎ、かつ華奢すぎる。あの若さと痩せた体で広島の二大ヤクザに手打ちをさせ、たった一人で上林一派と戦い、県警上層部に歯向かうのは荷が重過ぎではないか。底の見えない恐ろしさを持つ鈴木亮平にどう見ても勝つ感じがしない。

それでも久しぶりに映画らしい映画を見た快感は大きかった。

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